© 2025 Starlight Digital Ventures, LLC. All Rights Reserved.
『デッドマンズ・ワイヤー』ガス・ヴァン・サント監督 モラルと共感のはざまで 実話を描く【Director’s Interview Vol.575】
ビル・スカルスガルドへのこだわり
Q:そのようなトニー・キリシス役にビル・スカルスガルドが適役だと考えた理由は。
ヴァン・サント:実は、彼を別の映画の主役として起用しようとしていたのですが、その企画はわたしが『デッドマンズ・ワイヤー』に参加するのとちょうど同じ時期に中止になってしまったんです。彼にはどこか興味をそそられる、変貌自在な魅力があります。それでもっと小さな役でも一緒に仕事をする気はあるかと打診してみたら、彼も「他の作品で主役を演じている最中でなければ、興味がある」と言ってくれました。ですからしばらくの間、彼と一緒に仕事をすることや、主役ではない役で彼を起用することを考えていたんです。
そんな背景もあって、今回の作品に関しては、彼が主役に適任だと思えました。それで、「この作品では主役になるよ」と声をかけたんです。彼は多忙で、他の仕事の合間を縫って参加するような状況でしたが、乗り気でした。まあ、私が彼の父親であるステラン(・スカルスガルド)と『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』で仕事をしたということも、多少は関係していたかもしれません。当時、彼が実際に撮影現場に来たこともあったんです。もっとも、まだ7歳ぐらいの子供でした。ステランに会いに来ていた彼とご家族と――大家族でしたが、一緒に撮った写真を今も持っています。

『デッドマンズ・ワイヤー』© 2025 Starlight Digital Ventures, LLC. All Rights Reserved.
Q:コールマン・ドミンゴが演じたラジオのDJが流す音楽の選曲が最高でした(笑)。彼はとてもグルービーな雰囲気を醸し出していますが、もともとこの役に彼をイメージしていたのでしょうか。
ヴァン・サント:プロデューサーのカシアンは最初から黒人のキャラクターというイメージを持っていたみたいです。ただ、コールマンの前にじつは3人ほど白人俳優の候補が上がっていたのですが、スケジュールなどの都合で次々と見送られることになった。一方、カシアンはコールマンと別のプロジェクトについても話し合っていて、何かの折に本作の話が出たときに、彼の方から自分にできる役があればぜひ参加したいと言ってくれたのです。こちらとしては彼のような素晴らしい俳優から言われたらもちろん大歓迎なので、それで急遽、コールマンに演じてもらうことになったのです。おっしゃる通り、とてもグルービーな雰囲気を醸し出してくれました。それに彼の役柄は警察とトニーの間に入って冷静に対応し、あくまで声だけで躁状態にあるトニーを落ち着かせ、やりとりする。そんな声の魅力も生かしてくれたと思います。
『デッドマンズ・ワイヤー』を今すぐ予約する↓

監督:ガス・ヴァン・サント
ケンタッキー州ルイビル出身。ポートランド3部作と呼ばれる『マラノーチェ』(85)、『ドラッグストア・カウボーイ』(89)、『マイ・プライベート・アイダホ』(91)で注目を浴びる。マット・デイモンとベン・アフレック出演の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)で初めてアカデミー賞監督賞にノミネートされると、コロンバイン高校の銃乱射事件を描いた『エレファント』(03)ではカンヌ国際映画祭のパルム・ドールと監督賞をダブル受賞、政治家ハーヴェイ・ミルクの伝記映画『ミルク』(08)ではアカデミー賞監督賞にノミネートされるなど良作の映画を贈り出している。その他の監督作に『カウガール・ブルース』(93)、『小説家を見つけたら』(00)、『ラストデイズ』(05)、『プロミスト・ランド』(14)、『追憶の森』(16)などがある。
取材・文:佐藤久理子
パリ在住、ジャーナリスト、批評家。国際映画祭のリポート、映画人のインタビューをメディアに執筆。著書に『映画で歩くパリ』。フランス映画祭の作品選定アドバイザーを務める。
『デッドマンズ・ワイヤー』
絶賛上映中
配給:KADOKAWA
© 2025 Starlight Digital Ventures, LLC. All Rights Reserved.