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『ドラッグストア・カウボーイ』ガス・ヴァン・サント、マット・ディロン、未来の才能が芽吹いたジャンキー映画

(c)Photofest / Getty Images

『ドラッグストア・カウボーイ』ガス・ヴァン・サント、マット・ディロン、未来の才能が芽吹いたジャンキー映画

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『ドラッグストア・カウボーイ』あらすじ

1971年、オレゴン州のポートランド。ドラッグ中毒の青年ボブは、妻ダイアン、彼の仲間であるリック、ナディーンとチームを組んで、街中のドラッグストアを荒し回っていた。彼らは金には興味がなく、目的はドラッグを盗むこと。そんなある日、ボブが盗んだドラッグをこっそりくすねていたナディーンが、ドラッグの中毒で命を落としてしまう。不幸な出来事にショックを受けたボブは、ドラッグから足を洗う決意をする。メタドン治療を受けて堅気の人生をめざし、工場で働くようになるが…。


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渋谷のミニシアターを代表するヒット作



 『ドラッグストア・カウボーイ』(89)というタイトルを聞くと、反射的に浮かんでくる映画館がある。1986年から2016年までの30年間に渡って渋谷の中心的なミニシアターとして知られたシネマライズだ。本作の日本での公開は1990年で、13週間(約3か月強)上映されるヒット作となった。なんといっても印象的だったのがポスターのデザインである。黒のジャケットを着た主人公(マット・ディロン)が相手役を演じる女優(ケリー・リンチ)の上半身に寄りかかり、こちらを見ている。その背後には落書きをしたグレーの壁があり、薄紫の文字で「ドラッグストア・カウボーイ」とタイトルが書かれている。けっして派手なデザインではないが、何か妙に心惹かれる雰囲気があり、ポスターだけでひとつの世界観を作り上げていた。


 以前、シネマライズの関係者に取材した時、上映中はこのポスターが大人気で、貼れば貼っただけ、全部、盗まれてしまった、という話を聞いたことがある。もちろん盗みはよくないが、それほどまでに観客にアピールするものがあり、劇場側にも熱気があったということだろう。


『ドラッグストア・カウボーイ』(c)Photofest / Getty Images


 舞台は1971年のオレゴン州のポートランドで、物語の主人公はドラッグ中毒の20代後半の青年、ボブ。彼と妻ダイアン、彼の仲間であるリック(ジェームズ・レグロス)とナディーン(ヘザー・グレアム)はチームを組んでドラッグストアを襲う。金には興味がなく、ドラッグを盗むことだけにスリルを見出す。しかし、ある不幸な事件の後、ボブはドラッグから足を洗う決意をする。メタドン治療を受けて堅気の人生をめざし、工場で働くようになる。


 前半はクライム映画のようなスリルがあるが、後半はまるで別の作品となり、この点では意見が分かれた。公開時、主人公が足を洗う展開がつまらない、という声も聞いた。無軌道な青春を見ていたのに、急に別の展開になるからだ。ただ、映画全体のトーンは一貫していて、主人公ボブのナレーションを盛り込むことで、ジャンキーだった青年の内面の旅を描いた詩的な作品になっている。


 公開から30年後の2019年に、英国の“The Guardian”にこの映画を再評価する記事が出た。「『ドラッグストア・カウボーイ』はドラッグ中毒に関するベスト映画だったのだろうか?」というタイトルで、「20年前に作られていた『真夜中のカーボーイ』(69)と並び、現代的なアウトローを描いた作品」と位置づけられている。そして、「ディテールの奥行や洞察力の深さがあり、マット・ディロンのキャリアを決定づけた作品」という評価がなされている。





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