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『マイ・プライベート・アイダホ』『ドラッグストア・カウボーイ』<デジタルリマスター版>ガス・ヴァン・サント監督 スタイルは意図的なものではない【Director’s Interview Vol.579】
思いつく限りのアイデアを試す
Q:8ミリフィルムの映像や、ドラッグ摂取時のイメージのオーバーラップ、落ちてくる家や、動く雑誌の表紙、動きを止めたラブシーンなど、映像表現のアイデアが2作ともたくさん詰まっています。そういった映像的なチャレンジは、その後の作品にも見られます。それらは映画制作におけるあなたのテーマの1つとなっているのでしょうか。
ヴァン・サント:そうしたアイデアの多くは、私が過去に観た映画や、影響を受けたものから物語の中へと入り込んでくるのだと思います。例えば、『マイ・プライベート・アイダホ』で家や納屋が空から落ちてくるシーンは、「オズの魔法使い」の家が飛んでくるシーンと同じです。『ドラッグストア・カウボーイ』で見せたマルチパネル(分割画面)の映像は、様々な映画のモンタージュ手法から影響を受けています。多くの映画では本筋の進行を一旦ストップさせて、キャラクターの生い立ちや成長といった“物語の中の小さな物語”を語る手法が使われますよね。私は様々なジャンルの作品でそうした手法を見てきて、自分なりのモンタージュ表現を発明しようとしたのです。
時には私の個人的な創作と結びつくこともあり、例えば空中にモノが浮かぶモンタージュは、私が以前描いた絵画から着想を得ています。『マイ・プライベート・アイダホ』で使ったタイムラプスも、『マラノーチェ』ですでに試していた手法でした。時間をユニークに歪め、物事が高速で変化する様子を見せるこの手法は、結果的に『マイ・プライベート・アイダホ』の主人公が抱える睡眠発作を表現するのにぴったりの方法になりました。

『マイ・プライベート・アイダホ』©2026 WBEI
本編の撮影の合間でも、単に楽しいからという理由で、常に風景に向けてカメラをセットしていました。撮影監督が私物のカメラを持っていて、納屋や空、山などを気軽に撮影する余裕があったからです。私たちもその映像を気に入っていて、最初はクレジットの背景か何かに使おうと考えていました。しかしその後、主人公が眠りに落ちることを視覚的に示す演出が必要だと気づき、当初は予想もしていなかった完璧な使い道が見つかったというわけです。
そうやって、私は思いつく限りのあらゆるアイデアを試しています。視覚的に物語を伝える上で、それは本当に楽しい作業の一つですから。それが映画を作る“最大の理由”なのかどうかは分かりませんが、間違いなく理由の一つだとは言えます。
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監督:ガス・ヴァン・サント
1952年7月24日、ケンタッキー州ルイビル生まれ。父親がセールスマンのため、引っ越しすることが多く、高校時代をオレゴン州ポートランドで過ごす。ガス・ヴァン・サントは、ポートランドをアメリカで最も美しい街と語り、後の作品に大きな影響を与える。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで絵画と映画を学んだ後、CM製作の仕事に従事する。一時は、ロジャー・コーマンの助手も務めていた。1985年に『マラノーチェ』で映画監督デビュー。1989年にマット・ディロン主演で初の35mm長編作品『ドラッグストア・カウボーイ』を発表し、全米各地の映画批評家協会賞やインディペンデント・スピリット賞といった映画賞を数多く受賞。次の『マイ・プライベート・アイダホ』(91)では主演のリヴァー・フェニックスがヴェネツィア国際映画祭主演男優賞などを受賞し、アメリカのインディペンデント界を代表する監督となる。この初期の3作品は「ポートランド三部作」として知られており、ガス・ヴァン・サント監督の原点的作品となっている。その後、ハリウッドでも活動するようになり、当時無名であったマット・デイモンとベン・アフレックによる脚本の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)はアカデミー監督賞をはじめ、9部門にノミネートされ、アカデミー脚本賞とロビン・ウィリアムズのアカデミー助演男優賞に輝いた。2003年には、コロンバイン高校銃乱射事件をモチーフにした『エレファント』を発表し、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールと監督賞をダブル受賞する。2007年には『パラノイドパーク』で再びカンヌ国際映画祭に参加し、特別賞を受賞した。ゲイの政治家ハーヴェイ・ミルクの生涯を描いた『ミルク』(08)では、2度目のアカデミー監督賞候補となり、主演を務めたショーン・ペンがアカデミー主演男優賞を、ダスティン・ランス・ブラックが脚本賞を受賞している。その後も『永遠の僕たち』(11)、『わたしはロランス』(13)、『ドント・ウォーリー』(18)などを発表した。 今年7月には、1977年のインディアナポリスでの人質を題材にした『デッドマンズ・ワイヤー』が日本で公開される。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『マイ・プライベート・アイダホ』<デジタルリマスター版>
8月7日(金)シネマート新宿、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
配給:weber
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『ドラッグストア・カウボーイ』<デジタルリマスター版>
9月18日(金)シネマート新宿、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
配給:鈴正、weber
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