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「とわにロキを、いつでも」 ※注!ネタバレ含みます。【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.60】

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※本記事は物語の核心に触れているため、作品をご覧になってから読むことをお勧めします。


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おかしな役所に捕らえられた"いたずらの神"



 マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)でどの作品がいちばん好きかという問いに答えるのは、ただでさえ難しいのだが、このたびまたひとつ大好きな作品が増えてしまった。そしてそれは、シネマティックという名に反して映画ではなくドラマシリーズなのである。


 ディズニープラス・オリジナルのドラマシリーズ『ロキ』は、『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』において、ニューヨークでの戦い直後(最初の『アベンジャーズ』の時点)にタイムスリップしたアベンジャーズたちの作戦に巻き込まれ、四次元キューブを手にしてその場から逃げてしまったロキのその後を描く。兄のソーをはじめアベンジャーズたちの手から逃れたロキだったが、今度はすぐに「時間変異取締局(TVA)」という組織が現れ、「神聖時間軸」を乱したかどで彼を捕らえてしまう。


 実は、宇宙は無数に存在しており、全知全能の「タイムキーパー」なる存在が多元宇宙をひとつの時間軸に統一していた。ロキは本来ならアベンジャーズに捕まって故郷アスガルドに送り返されるはずだったところを、四次元キューブを持って逃げ出したため、あるべきシナリオから外れてしまった。そこでTVAは、新たに枝分かれしてしまったタイムラインを、「剪定」しにやってきたのである。ちなみにTVAによればアベンジャーズのタイムトラベル自体は既定通りらしく、ロキの行動だけがイレギュラーだった。たとえるなら、ドラえもんがのび太のもとにやってきたのは既定通りだが、悪党が恐竜をハンティングするのは犯罪、といったところ。そういうわけでロキはこのタイムパトロールじみた組織に囚われるが、やがて自分と同じく時間軸を乱した「変異体」を追うために協力を要請される。ロキならその変異体を止めることができるのではないか。それもそのはず、相手は別宇宙のロキだったのだ……。


 トム・ヒドルストンが演じる魅力たっぷりのロキが主人公というだけでも、とても期待していたのだが(ディズニープラスのマーベル・ドラマの中でも大本命だった)、まずTVAという組織のデザインに引き込まれてしまった。時空を行き来し、それを監視するような組織でありながら、その本部はレトロなオフィスのような雰囲気でまとめられたSF的役所で、『未来世紀ブラジル』に出てきた不毛な役所のマーベル版といったところ。暖色系の内装、角が丸みを帯びた大きなパソコン、黒電話、キーが分厚い操作盤、モニターは当然ブラウン管だが、そんなローテク機器に溢れながらも、ホログラムの再生ができたりといったギャップがまた素晴らしい。おかしな役所、ローテクの顔をしたハイテク、フライシャー・スタジオのようなカートゥーン・アニメーションの挿入、個人的な大好物だらけで、それだけでこの作品は間違いなくおもしろいと確信できた。





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