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『タクシー・ドライバー』ロバート・デ・ニーロ、マーティン・スコセッシ、ポール・シュレイダーと70年代、生み出した衝撃※注!ネタバレ含みます。

(c) Getty Images

『タクシー・ドライバー』ロバート・デ・ニーロ、マーティン・スコセッシ、ポール・シュレイダーと70年代、生み出した衝撃※注!ネタバレ含みます。


70年代、封切時の反響



 映画は76年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞していて、アカデミー賞でも作品賞、主演男優賞(ロバート・デ・ニーロ)、助演女優賞(ジョディ・フォスター)、作曲賞など4部門で候補となっている。日本でも「キネマ旬報」の評論家が選出したベストワン作品に選ばれた。専門家に高い評価を受けた作品だが、一般の映画ファンにもすごく人気があって、映画館でもヒットしていた。また、デ・ニーロやスコセッシも、この映画の成功で時代を背負う人物と考えられるようになった(デ・ニーロが77年5月16日の<ニューズウィーク>の表紙を飾った時は「デ・ニーロ:70年代のためのスター」という見出しが打たれていた)。


 当時の日本を振り返ってみると、学生運動は終わっていたが、それでも反体制の空気が残っていて、社会からドロップアウトした人物に共感が集まった(そのせいか、大学を中退する人もけっこういた)。既成の枠にはまることを嫌い、アウトサイダーがかっこよく見えた時代だ。60年代後半以降に登場したアメリカン・ニューシネマ系の映画も若者に支持されていた。


 『タクシー・ドライバー』も当時はそんなニューシネマの流れを組む映画の一本と考えられた。ちなみにこの映画の前年の第48回アカデミー作品賞受賞作は、ジャック・ニコルソン主演の『カッコーの巣の上で』(75)。精神病院で自由を求めようとする人物の物語だ。同年、同じくオスカー作品賞候補となったのがシドニー・ルメット監督の『狼たちの午後』(75)である。こちらはアル・パチーノ演じる銀行強盗がニューヨークの銀行に押し入り、予期せぬエンディングを迎える。こうしたアウトサイダー映画のひとつの原点となっているのが『真夜中のカーボーイ』(69)で、ニューヨークの底辺で生きる主人公たちの友情が描かれた。



 若い観客はこうしたアウトサイダーの映画を見慣れていたので、トラヴィスのこともそれほど違和感なく受け入れ、どこか自分自身を重ねて見ていたのではないだろうか。自分の中に彼ほどの狂気はなくても、彼が体現する都市の孤独は他人事には思えなかったからだ。一方、体を鍛えて、最後に娼婦の家に乗り込んでいく場面にはどこか任侠映画のような感覚もあり、この手の映画が好きな人にも支持されていた(脚本家のシュレイダーは日本映画の研究家でもあり、高倉健主演のハリウッド映画『ザ・ヤクザ』(74)の脚本も手がけている)。


 ただ、他のニューシネマと異なっていたのは、彼には『真夜中のカーボーイ』の主人公のように仲間がいなかった点だろう。むしろ、もうひとりの主役ともいえるのは、タクシーだった。スコセッシは“メタル製の棺”と車を呼んでいるが、その中にこもり、都会の匿名性を生きる男のアイデンティティ(=個のあり方)が追求される。他のアウトサイダー映画の主人公たちと比べると、心の闇がさらに深いように思われた。




 この映画は知事暗殺事件を企てた実在の人物、アーサー・ブリーマーの日記に加え、ドストエフスキーの「地下生活者の手記」やサルトルの「嘔吐」などの文学作品も意識して作ったという。かつては今より文学&哲学的な物の見方が好まれたので、予想がつかない行動をとるトラヴィスを「頭がおかしな男」と見るのではなく、大都会で自己のアイデンティティを模索する男と考え、そこに自分を重ねることができたのだろう。ニューシネマ系映画の最も重要な要素のひとつは“さすらい”で、自分が何者であるのか知るため、彼らは心の旅に出ていたのだ。



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