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『クレイマー、クレイマー』ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ、ジャスティン・ヘンリーは、いかにして歴史に残る名演を生み出したのか?

(c)1979 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

『クレイマー、クレイマー』ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ、ジャスティン・ヘンリーは、いかにして歴史に残る名演を生み出したのか?

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自分自身と真正面から向き合うことがいちばん難しい



 この映画の主演を打診された時、ダスティン・ホフマンは「冗談じゃない!」と感じた。どうして俺が、深い心の傷に塩を塗り、さらに傷口を広げるような真似をしなければならないのか。


 監督とプロデューサーが交渉に訪れてもあからさまに怪訝な態度を示したという彼。それも当然といえば当然か。なぜなら当時、ホフマン自身が、主人公と全く同じ離婚問題の苦しみに直面していたからだ。


 だが、いつしかこの企画について腹を割って話をする機会が巡ってきた時、ひとつの言葉が彼の俳優魂に火をつけることになる。


「なあ、俳優にとって一番難しいこと、それは自分自身と向き合うことなんじゃないか?」



『クレイマー、クレイマー』(c)1979 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.


 この役柄を演じる上では、明らかにダスティンの内面をさらけ出すことが必要となる。心の内側に深く潜ってこの苦しみの原因を手繰り寄せて、自分自身を発見する。果たして俺にはそれができるのか。俳優としてその覚悟があるのか————。


 決意を固めた彼は、ロバート・ベントン監督に脚本を徹底的に書き直すことを提案する。自分も参加して、内面をさらけ出しながら、机上のセリフにリアルな命を吹き込んでいこうというのだ。ゆえにそこには当時のホフマンが経験していた生々しい痛みや苦しみ、日々の気づき、それを乗り越えたところにある気持ちなどが偽りなく散りばめられている。本作が生き物のような存在感で我々の心をとらえる理由は、そこにあるのだ。



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