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『ターミネーター:ニュー・フェイト』『T2』の「正統な続編」は、紛うことなき“本物”だった!(with IMAXレーザー鑑賞レポート)

(C)2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film

『ターミネーター:ニュー・フェイト』『T2』の「正統な続編」は、紛うことなき“本物”だった!(with IMAXレーザー鑑賞レポート)

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T-1000の影を映した新キャラクターREV-9



 語弊がある言い方かもしれないが、「新しいことをしない」というキャメロン流の続編製作術は、実に見事だ。根本から新しいものを足すのではなく、前作の良い部分をアップデートさせる。物語の基本構造を踏襲しているのも、『ターミネーター』『ターミネーター2』とリンクする演出の数々も、全てが合理的だ。


 『ターミネーター2』で観客の度肝を抜いたのは、やはりT-1000の鮮烈なビジュアルだろうが、『ターミネーター:ニュー・フェイト』ではその部分もアップデートさせている。ゼロから新たな敵を作るのではなく、REV-9はT-1000の上位互換だ。液体金属は進化に進化を重ね、ヴェノムのように着脱可能、「2人で1つ」の状態にまで到達。液体金属の外皮と、金属炭素の内骨格がそれぞれ独立して襲い掛かってくる。


 これは実質ターミネーター2体と戦っているようなもので、元々勝ち目のない相手がさらに手ごわくなっており、絶望感を存分にあおってくる。しかも、『ターミネーター』『ターミネーター2』ではなかった水中バトルや空中バトルが描かれ、そこでもREV-9は一切止まらない。コピー能力やコミュニケーション力も格段に上がっており、表情も豊か。見た目も話し方も完全に人間だ。「怖さ」や「気味悪さ」といった面ではT-800やT-1000に及ばないが、この「恐ろしくない」状態は、逆にターミネーターがほとんど人間にまで近づいていることの証明ともいえ、逆説的に恐ろしくもある。



『ターミネーター:ニュー・フェイト』(C)2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film


 ここで抜群に上手いのは、あえてフォーマットを同じくし、上位互換として描くことで、観客の脳裏に常にT-1000の面影を抱かせることだ。「T-1000のほうが怖かった」と仮に思ったとしても、それこそが製作陣の術中。観る側が自ら補完することで、『ターミネーター:ニュー・フェイト』は、『ターミネーター2』の正統な続編である、といった意味合いがどんどん強くなっていくのだ。


 観る者の思い出に火をつけ、加熱させる。その結果、作品同士の結びつきが強固になっていく。「そのまま」「上書き」「加筆」を巧みに使い分けるキャメロンのテクニックは、本作でも十二分に効果を発揮している。


 REV-9はその方法論を象徴する存在であり、逆にまっさらなキャラクターであるグレースは、人類の“進化”を担うポジションだ。ただ、彼女には活動上限という“アキレス腱”があり、そのことが余計に人間の不自由さを強調する。人間がどれだけ進化し、身体を強化しても、ターミネーターにはかなわない――この残酷な“真実”は、グレースの存在によってますます絶望感を帯び始める。しかしそのことが逆に、生身の、しかも歳を取った状態であっても決して折れない鋼の魂を持つサラのキャラクターを、神々しいものへと高めてもいくのだ。


 「新しさ」という点で言えば、忘れてはならないのがティム・ミラー監督の存在。彼の持ち味は、『デッドプール』で魅せたように、ケレン味たっぷりなアクションが高速で展開、いやむしろ“回転”することだろう。


『デッドプール』予告


 キャラクターの動きが速いというよりも、画面全体の速度が速い。プラス、画面自体がうねり、音を立てるようにカーブする。まるで剛速球のような破竹のアクションは、本作でも随所で炸裂する。爆風で吹き飛んだキャラクターがそのままの勢いで突っ込んでくる、といったようなある種漫画的な展開を、大真面目に、かつ熱量高く描くため、不思議な説得力が生まれる。


 『ターミネーター』や『ターミネーター2』のような生身感、生々しさは薄まったものの、その分アクロバティックでスピーディな肉弾戦、陸海空の全要素が入った一大スペクタクルで畳みかけ、苛烈なアクションてんこ盛りで魅了する。これは逆に、2019年の今の映画だからこそできるワザといえる。



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