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『ブルース・ブラザース』製作から40年超、今も衰えぬ破壊力とは?

(c)Photofest / Getty Images

『ブルース・ブラザース』製作から40年超、今も衰えぬ破壊力とは?

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復活を遂げたブラックミュージックのレジェンドたち



 前置きが長くなったが、ここからふたつの柱のひとつ、“音楽”の話を。ブラックミュージックのファンには、本作に出演しているアーティストの豪華な顔触れはご存じの通り。孤児院の管理人を演じたキャブ・キャロウェイは1930~40年代に活躍したシンガーにしてエンタテイナー。さらにソウル・ミュージックのゴッドファーザー、ジェームス・ブラウンが牧師を演じ、クイーン・オブ・ソウルの異名をとるアレサ・フランクリンがダイナーの女店主役に。楽器店の店主役にふんしているのはR&Bのレジェンド、レイ・チャールズだ。さらに路上で演奏しているのは、伝説的ブルース・ミュージシャン、ジョン・リー・フッカー。とにかく、とてつもなく贅沢なメンツだ。



『ブルース・ブラザース』(C) 1980 Universal Studios. All Rights Reserved. 


 が、先にも述べたように、この時期のブラックミュージックはディスコ全盛で、彼らのようなブラックミュージックの伝統を継ぐアーティストには厳しい時代だった。とりわけ、ジェームス・ブラウンやアレサ・フランクリンのような、一時代を築いたがために、より多くの売り上げをレコード会社から求められるアーティストには、セールスの低迷は深刻だった。


 それゆえか、または全力を注入するアーティストの性ゆえか、あるいはその両方かはわからないが、ブラウンもフランクリンも、本作の重要な局面で神がかったパフォーマンスを披露する。教会でゴスペルを歌いながら踊るブラウンは汗まみれで、しゃがれた声を発し続ける。一方のフランクリンは自身の代表曲「シンク」を、劇中で演じたキャラクターの気持ちを代弁するかのように熱唱し、ミュージカルシークエンスを成立させた。


フランクリン「シンク」ミュージカルシーン


 ブラウンもフランクリンも、好評を博した本作への出演を足掛かりにして、80年代半ばにチャートに返り咲く。映画絡みの曲で言えば、前者は『ロッキー4 炎の友情』で使用された「リヴィング・イン・アメリカ」で、後者はウーピー・ゴールドバーグ主演の『ジャンピング・ジャック・フラッシュ』の主題歌で。余談だがブラウンの自伝「俺がJBだ!」によると、彼は60年代、フランクリンと恋仲になったことがあるとのこと。


 劇中歌のレコーディングに関しては、ブラウンとフランクリンでは異なる手法が取られた。前者は演技とともに熱唱を同時録音した。後者はあらかじめレコーディングしておいた音源に合わせて、撮影が行なわれた。しかし、いずれのシーンも苦労がついてまわったという。というのも、両者は同じ歌を歌っても、一度目と二度目ではまったく違うものになる。それが芸風でもあるのだが、映画にそれを収めるには大きな足かせとなる。ブラウンの場合は、一発録りゆえにミスは許されない。フランクリンの場合は、レコーディングした音源に撮影時の口の動きが合わない。撮影スタッフも編集スタッフも大いに頭を悩ませることになった。



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