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『アイリッシュマン』マーティン・スコセッシが描いてきたギャング映画への「落とし前」

『アイリッシュマン』マーティン・スコセッシが描いてきたギャング映画への「落とし前」


デ・ニーロとパチーノの豪華な共演、スコセッシ組のスタッフたち



 今回の映画は、まずはロバート・デ・ニーロありきの企画だったが、彼は同世代のスターのアル・パチーノとも組むことになり、スコセッシ映画での夢の初共演が実現した。ふたりが初めて会ったのは70年代で、ずうっと仲間意識を持っていたようだ(思えば『ゴッドファーザーpartⅡ』(74)のデ・ニーロは、パチーノ演じるマフィアのドン、マイケル・コルレオーネの父の若い時代を演じていた)。


 ふたりは『哀しみの街かど』(71)、『ゴッドファーザー』(72)のオーディションも受けている(結局、どちらもパチーノが役を得た)。<ヴァラエティ>に掲載されたインタビューで、パチーノは「70年代にはいつも同じ役を競い合っていた」と語り、「そう、ライバルだった」とデ・ニーロも認める。


 そんなふたりの本格的な初共演作は『ヒート』(95)だった。スコセッシ映画の常連だったデ・ニーロとは異なり、スコセッシとパチーノは、今回、初顔合わせとなった。しかし、実は以前から映画を撮る話は出ていて、画家のモディリアーニを主人公にした作品を企画したこともあったという。




 新作に関しては、監督がパチーノと親しいデ・ニーロに話を持ち掛けたら、「彼ならきっと大丈夫」と言われ、ホッファ役をふることになったという。記者会見などの動画を見ると、パチーノは華やかな雰囲気があって、大声で話すが、デ・ニーロは口数も少なく控えめな印象だ。パチーノはカリスマ的で感情を抑えられないホッファ役で、デ・ニーロは地味で職務に忠実なシーラン役。そこにはふたりのキャラクターも反映されているのだろう。


 近年は映画界を引退していたジョー・ペシが、シーランのボス的なバッファリーノ役だが、ペシはこの役を断り続けたという(50回は断ったといわれる)。そこでスコセッシが『グッドフェローズ』や『カジノ』でペシが演じた血の気の多い役とは違うことを説明し、デ・ニーロのとりなしもあって、やっと出演を決意したという(デ・ニーロは製作総指揮も担当)。結果的にはペシは渋い好演を見せていて、彼の新たな代表作にもなっている。


 スコセッシ一家としては、ハーベイ・カイテルもギャングのブルーノ役で出演している。出番は少しだけだが、それでも彼がいることで映画にさらなる厚みが加わる。女優では、シーランの娘ペギー役のアンナ・パキンが印象に残る。出番もセリフも少ないが、厳しい視線を父親に向けることで娘としての複雑な内面を表現。彼女がいることで殺し屋の良心の呵責が浮かび上がる。




 スコセッシのギャング映画の集大成ともいえる大作ゆえ、俳優以外にもスコセッシ一家がズラリとそろっている。撮影監督のロドリコ・プリエトがスコセッシと組むのは5回目、プロダクション・デザインのボブ・ショウは4回、衣装のサンディ・パウエルは7回、製作者のエマ・ティリンジャ―・コスコフは10回以上、編集者のセルマ・スクーンメイカーは30回近い参加となる。俳優はデ・ニーロが前述の通り9回、ペシが4回、カイテルが6回目の参加。


 映画ではギャングたちの信頼と裏切りが描かれるが、俳優やスタッフとの結束の固さがこの映画の成功の要因のひとつにもなっている。



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