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『ドクター・スリープ』キューブリック作『シャイニング』を引き継ぎつつ、原作者キングを満足させた理由とは ※注!ネタバレ含みます。

(c)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

『ドクター・スリープ』キューブリック作『シャイニング』を引き継ぎつつ、原作者キングを満足させた理由とは ※注!ネタバレ含みます。

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キング作で異例の“超人団体戦” 



 ところで、題名の『ドクター・スリープ』は何を意味するのか。端的に言えば、ダンが断酒してから勤めるようになったホスピスでのニックネームだ。ダンは医者ではなくケアワーカーだが、患者に「死は気持ちのいい眠りに落ちていくようなものだ」と話し、シャインの力を使って彼らが心安らかに他界できるよう手助けする。


 記憶のいい人なら、『シャイニング』の序盤でホテル料理長のハロランが初対面のダニーを「ドク(先生)」と呼んだのを覚えているだろう。予知のような特別な力を持つことを薄々感じている母ウェンディは、アニメキャラクターのバッグス・バニーの決め台詞「What's up doc?(どったの先生?)」から拝借してダニーを家でそう呼ぶのだが、なぜ初めて会ったハロランが知っているのか不思議がる。ここはハロランが初めてシャインの能力をさりげなく示す場面だ。



『ドクター・スリープ』(c)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved


 かつてドクとあだ名されたダニーが、大人になって“ドクター”と呼ばれるようになる――。こうした細やかなつながりもキングの巧さを感じさせる。


 “ホラーの帝王”と称されるキングの小説は数多く映画化されているが、恐怖をもたらす(または感じる)主体としてのキャラクターに注目すると、主要な映画化作品は大まかに以下の3タイプに分けられるように思う。


 A:超能力を持った主人公の孤独な戦い……『キャリー』(76)『炎の少女チャーリー』(84)『デッド・ゾーン』(83)など


 B:邪悪な意志を持った人間以外の存在(動物、機械、地球外生命体など)と戦う普通の人間……『クジョー』(83)『クリスティーン』(83)『IT』(90)など


 C:人間の狂気や悪意が生む恐怖……『ミザリー』(90)『黙秘』(95)『ドランのキャデラック』(09)など


 もちろんすべてがきっちり区別できるわけではなく、AとBを組み合わせた『ドリームキャッチャー』(03)や、BとCの組み合わせである『ミスト』(07)もある。この分類で考えると、『シャイニング』は超能力者が登場し(ダニーとハロラン)、ホテルの悪霊がいて、人間の狂気(ジャック)も描かれるという、ABCの要素が盛り込まれた珍しいケースとなる。



『ドクター・スリープ』(c)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved


 では続編の『ドクター・スリープ』はどうか。これがキング作品としてはますます異例の、ダン&アブラのシャイン使いチームとローズ・ザ・ハット率いるトゥルー・ノットが対決する、超能力者チーム同士の団体戦の様相を呈するのだ。おそらく大勢が、「X-MEN」シリーズのミュータント同士の戦いのようだと感じたのではないか。



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