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『ドクター・スリープ』キューブリック作『シャイニング』を引き継ぎつつ、原作者キングを満足させた理由とは ※注!ネタバレ含みます。
救済された“キングの分身”
先に、小説の「シャイニング」で自らを犠牲にすることでホテルに“勝利”して妻子を守ったジャックは、「自己犠牲のヒーロー」だと書いた。ジャックが機械室のボイラーを暴発させてホテルを燃やすという小説の結末――キューブリックが映画で採用せず、キングを怒らせた要因――は、フラナガンの脚本により『ドクター・スリープ』の映画オリジナルのラストとして“復活”を果たしたのだ。
『ドクター・スリープ』(c)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
映画『シャイニング』をあれほど忌み嫌ったキングのことだから、『ドクター・スリープ』の映画化に際してキューブリックの改変要素を引き継ぐことには不満もあっただろう。それでも、キングは自らを投影した、分身と言ってもいいジャックの不遇を、その息子ダンに晴らさせるというフラナガンの秀逸なアイデアと心遣いに満足した。「キューブリックの映画に欠けていた温かみが、フラナガンの映画には感じられる」とキングは評価している。
フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。
『ドクター・スリープ』
公式サイト: doctor-sleep.jp