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『デューン/砂の惑星』スタジオの支配体制に翻弄された、奇才デヴィッド・リンチ唯一無二のSF映画

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『デューン/砂の惑星』スタジオの支配体制に翻弄された、奇才デヴィッド・リンチ唯一無二のSF映画

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失敗という名の通過点



 『デューン/砂の惑星』における敗因は、明確に示されていた。デヴィッド・リンチにはファイナル・カット(最終編集)の決定権がなかったからである。監督の意図を汲まず、与り知らぬところで編集されたそれは、荒唐無稽に継ぎ接ぎされた、監督の構想する完成形とは似ても似つかない代物だった。


 それでいて、映画は2時間弱に収めなければならなかったし、レイティングはPG(アメリカ合衆国のレイティングランク。子どもの鑑賞には、保護者の指導を推奨)でと、製作時に指定されていたそうだ。なんらかの刺激的なアイディアが浮かんだとしても、PGの魔の手にかかれば、その大半をカットしなければならない。構想の面でも、当初のスケールから大幅な縮小を余儀なくされ、あらゆる意味で、スタジオの要求に屈するほかなかったのである。自らの作家性を封じられ、身動きのとれなくなったリンチは、ロケ先であるメキシコ・シティの片隅で、ひとり孤独に死――作家としての死――を待つだけだった。




 自由な映画製作こそがリンチ監督の才能を開花させるものだとしたら、『デューン/砂の惑星』の支配的な映画製作は、文字通り監督の才能を封じるだけのものだった。とはいえ、監督はこの映画で失敗という経験を積み、この悲劇を糧として、その後の映画製作に活かし続けている。例えば、『ブルーベルベット』(86)ではスタジオとの交渉の末、大幅な予算削減と引き替えに、ファイナル・カットの権利を獲得するに至っている。


 『デューン/砂の惑星』がもたらしたのは、悲観的な出来事だけではない。舞台役者として活躍していたカイル・マクラクランの映画デビューとなった本作は、彼の映画/ドラマ業界でのその後の活躍を考えれば、意味のある作品だったといえるだろう。リンチによって発掘されたカイル・マクラクランは、その後もリンチ作品の常連俳優として、『ブルーベルベット』「ツイン・ピークス」(90-17)などに参加し、今では名優のひとりとして数えられている。




 つまり『ブルーベルベット』の興行/批評面での成功は、『デューン/砂の惑星』での恐るべき苦難の経験から成し得られているわけだ。この作品での苦労がなければ、今日のリンチ作品はここまで評価されていなかったかもしれない。



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