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『デューン/砂の惑星』スタジオの支配体制に翻弄された、奇才デヴィッド・リンチ唯一無二のSF映画

(C) 1984 DINO DE LAURENTIIS COMMUNICATIONS. ALL RIGHTS RESERVED.

『デューン/砂の惑星』スタジオの支配体制に翻弄された、奇才デヴィッド・リンチ唯一無二のSF映画

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スタッフの努力が込められた、執念のカルト作



 ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』が興奮と感動をもたらすSF的正統作であるならば、本作『デューン/砂の惑星』は、まさしく真逆の解釈のもとで描き出されている。砂の惑星“アラキス”で生成される希少な香料“メランジ”を巡る、強圧的な政治思想を活写する本作には、『スター・ウォーズ』のような大衆的な娯楽性はほぼ皆無といっていいだろう。では、なにが本作の魅了であるかといえば、それは『イレイザーヘッド』や『エレファント・マン』を観れば明らかだが、デヴィッド・リンチの特異な作家性にあるといっていい。


 本作『デューン/砂の惑星』は、巨額の製作費を回収できず、前述の通り赤字を招いた作品だ。しかし本作は、その事実は別として、今では映画ファンのあいだでカルト作として崇拝されている。興行面では確かに不発であると認められるが、その作品の根幹には多くのスタッフの努力が込められている。




 例えば、カルロ・ランバルディがデザインした砂虫(サンド・ウォーム)の恐ろしい造形や、ケネス・マクミラン扮するハルコネン男爵の醜悪な容姿、砂の惑星の荒涼とした自然環境、そこには『スター・ウォーズ』のような煌めきは一切ない。デヴィッド・リンチは、スタジオによる支配的な映画製作によって、自らの才能を封じられてしまったが、それでもスクリーンの中でこだましているのは、リンチ監督の“もがき”のようなものだった。


 派手なアクションシーンなどはほぼ無いに等しいのだが、それでも『デューン/砂の惑星』が現在もカルト的に愛され続けている理由は、リンチ監督が貫き通そうとした気概のようなものにある気がする。そして、その気概のような波長がSF的世界観と奇妙なリンクを果たし、SF映画としては極めて“異物的”な作品として完成されたことにある。これもリンチ作品の常であるが、1度だけの鑑賞ではほとんど理解しがたい、心地よい難しさも定評される理由だろうか。


 本作にこだまする努力の断片は、あらゆる要素から確認できる。例えば、映画に登場するデザインもそのひとつだ。登場するキャラクターの衣装は、極めて洗練された中世ヨーロッパ的な様式美を漂わせ、それでいて、映画には未知のクリーチャー的なキャラクターも登場し、さまざまな世界観を混在させている。これらは衣装デザイナーのボブ・リングウッドと、視覚効果アーティストのカルロ・ランバルディという、ふたりの名スタッフによる技術、あるいは熱意のぶつけ合いであり、まさしく努力の結晶であるといえる。




 それらを切り撮る撮影技術も極めて高度なものである。撮影監督は、デヴィッド・リンチと本作で2度目のタッグを組んだフレディ・フランシス。『息子と恋人』(60)でアカデミー賞撮影賞を獲得し、『エレファント・マン』では白黒フィルムの極めて高度なカメラワークが評価された。フレディ・フランシスの撮影はまさに正攻法で、奇をてらうことなくセオリー通りの画作りが特徴だ。それは本作でも健在で、カメラのモーションを極力抑えた優雅な画作りに魅了される。『デューン/砂の惑星』は、失敗の烙印を押された不遇な作品だ。しかし、その製作にはスタッフの努力が見事なまでに結晶し、輝いている。観るべき価値は十分に、いや十二分にあるだろう。



<参考>

映画『デューン/砂の惑星』劇場用プログラム

映画作家が自身を語る デイヴィッド・リンチ 改訂増補版」(フィルムアート社)クリス・ロドリー(著)/廣木明子・菊池淳子(訳)



文: Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「リアルサウンド映画部」など。得意分野はアクション、ファンタジー。



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『デューン/砂の惑星』

日本公開30周年記念特別版 Blu-rayボックス発売中

価格:7,800円 (税抜)

(C) 1984 DINO DE LAURENTIIS COMMUNICATIONS. ALL RIGHTS RESERVED.

発売元:「砂の惑星」ブルーレイ発売委員会

販売元:ハピネット・メディアマーケティング

企画協力:フィールドワークス

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