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『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う』が描くセカイ系のセカイ・ノ・オワリ

(c)Photofest / Getty Images

『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う』が描くセカイ系のセカイ・ノ・オワリ


 1970年代初頭。ヴィヴィアン・ウェストウッドはパートナーのマルコム・マクラーレンと共にロンドンでブティック経営をしていた。


 最初はロカビリー・ファッションを扱い、店名は「Let It Rock」。バイカー・ファッションを扱いだすと店名は「Too Fast to Live, Too Young to Die」に変わり、SM風ボンテージ・スタイルを取り入れたファッションに変わった時には「SEX」。その後、伝説のパンクバンド、セックス・ピストルズを生み出すことになる「SEDITIONARIES」へ。そして最後に「ワールズ・エンド」へ変わり、この名前で現在もヴィヴィアン・ウェストウッドのブティックとして営業中である。


 この「ワールズ・エンド」という名前はイギリスに多い地名のことで、日本で言えば富士山が見えるから「富士見町」と同じように、通りの行き止まりだから「ワールズ・エンド」という意味である。


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自分だけ何も知らされていない恐怖



 『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う』(13)はエドガー・ライト監督と、サイモン・ペッグ、ニック・フロストの3人組による「スリー・フレーバー・コルネット3部作」の最終作である。1作目『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)はゾンビ・アポカリプスを描いたホラー・コメディ。2作目『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』(07)は80〜90年代のバディ刑事トリビュートもの。



 そして3作目は、ジャック・フィニイの「盗まれた街」を原作にした「ボディ・スナッチャー」をタイトルに冠した作品群や、ジョン・ウィンダム原作の『光る眼』(95)など、侵略SFを骨子とした作品になっている。


 「侵略SF」とは「見慣れたハズの隣人の様子が少し変なのは、宇宙人に体を乗っ取られたからだ!少しずつ世界の人々が宇宙人と入れ替わっている!」という、ある種の定型で「盗まれた街」や「光る眼」が書かれた1950年代を鑑みれば「隣人は共産主義に傾倒したヤツかもしれない……!?」という「赤狩り」に代表される共産フォビアとでも言うべきパラノイアックな侵略被害妄想を刺激するモチーフであっただろう。


 近年では「自分は周囲に受け入れられているのだろうか?表では仲良くしてくれていても裏ではバカにされているんじゃないだろうか……!?」という、インターネット時代特有の疎外感の被害妄想を焚きつけるモチーフへと変化している。



 『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う』で描かれているのは「学生時代にはいっしょに呑んだくれて遊んでいたのに、いつのまにか自分を残してみんな真っ当に仕事を始めている。誰も「もう遊ぶのは止めましょう。将来のために勉強したり仕事に就いたりする時期ですよ。」とは教えてくれなかった!」という、サイモン・ペグ演じるゲイリーの逆恨み的な疎外感の象徴なのだが、「大人になれない男」を描かせれば天下一品のエドガー・ライトは、そこからさらにひとひねり加えている。


 「みんな、自分の知らないうちにチャンと就職しているなんて、きっと宇宙人に侵略されて身体を乗っ取られたに違いない!」という、自分の自堕落さを直視するくらいなら世界の危機でも来てくれていた方が、いくぶん心がおだやか。という「大人になれない男」らしいセカイ系の物語にしているのである。



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