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『ブレードランナー』CG無しのアナログ撮影が生み出した、伝説のオープニングに迫る!

TM & (c)2017 The Blade Runner Partnership. All Rights Reserved.

『ブレードランナー』CG無しのアナログ撮影が生み出した、伝説のオープニングに迫る!

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30年経っても色褪せないアナログ撮影の秘密とは!?



 30年以上経っているにも関わらず、画のクオリティを保っているSF作品はそれほど多くは無い。そしてそれらの代表的な作品である『ブレードランナー』『2001年宇宙の旅』『未知との遭遇』の特撮に携わった男がいる。それが特撮の神様とも呼ばれるダグラス・トランブルだ。


 先に紹介した『ブレードランナー』のオープニング「冥界風景」も、トランブル率いるEEG(エンターテインメント・イフェクツ・グループ)の手によるアナログ撮影の賜物だ。では彼らがどのようにしてあの圧倒的な画を作りあげたのか。その一端を見ていきたいと思う。ポイントは「強制遠近法」「多重露光」「空気遠近法」だ。


 一つ目のポイント「強制遠近法」とは、ミニチュアの建物を作る際に、手前のものを大きく、奥に行くに従って小さく広く作っていき、それをレンズの特性を活かして撮影、あたかも本物のような奥行きと広がりを表現する手法である。「冥界風景」にもこの手法が用いられ、手前の建物はミニチュアで詳細に作っているものの、奥にあるものはなんと真鍮板で作った建物のシルエットなのだそう。それを何枚も作って並べているだけなのだそうだが、何度見ても只の板には見えない。。まさに映画のマジックである。



『ブレードランナー』TM & (c)2017 The Blade Runner Partnership. All Rights Reserved.


 そして二つ目のポイント「多重露光」だが、これは一つのフィルムの同じコマに何度も撮影(露光)していくことを指す。例えば「二重露光」だと2枚の画が重なっていることとなるわけだ。心霊写真のトリックはこの二重露光を使ったものが多いと言えば、想像しやすいかもしれない。


 この多重露光を行うことによっていわゆる合成作業を行っていくのであるが、「冥界風景」ではカメラが全体的に前に向かって進んでいるため、動きを伴って撮影しなければならない。多重露光では、タイミングや動きが少しでもズレると当然「画」もズレてしまうため、フレーム単位/ミリ単位で全く同じ動きをすることが必要となってくる。ここで登場するのが「モーション・コントロール・カメラ」である。


 このカメラはコンピューターのプログラム制御で全く同じ動きが再現可能であり、『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』で初めて使用されたものだ。しかも当時はフロッピーディスクも普及していない時代。磁気テープにプログラムを記憶させてこのカメラを動かしていたとのこと。このカメラを使い、何度も同じ動きを繰り返し一つのフィルムを撮影しては巻き戻して、一つ一つ合成していったのだそうだ。


 「冥界風景」では、ベースとなるミニチュア、煙突から吹き出す炎、空飛ぶスピナー、落雷などなど、何と17回も同じ動きで撮影を行って合成している。動きはカメラで制御しているものの、被写体の方の制御もあるため、撮影は困難を極めたようだ。。時にはあまりの撮影(露光)にフィルムが耐えられず破損してしまうこともあったとのこと。気の遠くなるような作業である。。


 最後、三つ目のポイント「空気遠近法」であるが、これはその名の通り「空気感」を利用した遠近法のことである。外で遠くの景色を見ていると「もや」がかかっていたり色味が違って見えたりすることがある。この特性を利用して、遠近感を表現する手法なのだが、これには『ブレードランナー』の持つディストピアの世界観が多いに役立ったという。


 前述の記事にも掲載したが、リドリー・スコットの言う「私の武器は、夜と雨と煙だった」がここでも効果を発揮したのだ。ナイトシーンであることが合成の粗を隠し、近未来の空気汚染を演出した煙(もや)が、この「空気遠近法」の絶大な効果をあげたのである。



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