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『コンテイジョン』我々はどう「動く」べきか――新型コロナを予見した細菌パニック映画

(c)Photofest / Getty Images

『コンテイジョン』我々はどう「動く」べきか――新型コロナを予見した細菌パニック映画


「ぞっとする」演出で始まるオープニング



 ここからは、『コンテイジョン』の中身について詳しく紹介していこう。


 冒頭で「新型コロナウイルスにさらされている今の状況と酷似している」と述べたが、本作は始まった瞬間から、観る者を戦慄させるはずだ。真っ暗な画面に響き渡るのは、誰かが咳き込む声。「不要不急の外出を控える」ようお達しが出ている今だが、食料品や日用品の調達、どうしても外せない用事などで外に出る機会があるかと思う。


 そんなときに、他者の咳やくしゃみに対して過敏になってしまってはいないだろうか? 一種のトラウマのトリガーになりつつある「咳」から始まる『コンテイジョン』は、開始1秒で我々の心にぞっとするほどのさざ波を立てる。


 ソダーバーグ監督の恐るべき演出は、まだ終わらない。続くカットでは、登場人物の手元や口元に異常にフォーカスを当てている。これも、今の我々にとってはかなりおぞましい構図だ。


 感染者が何に触り、何を食べたのか、そしてそれがどこに運ばれていくのか……。粘着質なまでに手すりやコップ、皿に盛られた料理を見つめ、ウイルスの「軌道」を可視化させる映像表現には、一切の隙がない。同時に、ここまで現状とリンクさせる作り手たちの「先見の明」に驚嘆させられる。



 

 その後、香港、アメリカ、イギリス、日本等、各地で人々が急死。本作で描かれる新型ウイルスは致死率が25~30%ほどだが、進行が恐ろしく速い。鳥肌が立つようなシーンとして、感染者の遺骨をバスで運ぶ道中に遺族が発病して死ぬという描写や、感染した妻ベス(パルトロウ)が病院で死亡し、自宅に帰る途中で息子も死亡するという主人公ミッチ(デイモン)の壮絶な運命が挙げられる。妻の死を告げられたミッチの「妻に会えますか?」「さっきまで家にいたんです」という困惑したセリフは、状況に頭が追い付いていない状況を如実に表している。


 先ほど編集について書いたが、作品全体の展開を見ても始まって10分足らずで妻と子どもが病死するという展開は、衝撃的だ(ちなみにその後、ミッチは妻が出張先で浮気していたことを知り、さらなる絶望に陥る)。


 『アイアンマン』シリーズの美人秘書ポッツ役で世界的な人気を獲得したパルトロウだが、本作ではウイルスの恐怖を伝える役として、意識がもうろうとし、泡を吹いてけいれんし、瞳孔が開いて別人のようになるなど、鬼気迫る演技を披露している。たった3日で自分の出番を撮り終えたというから驚きだ(ちなみに本作で彼女は、基本的にノーギャラで出演したとか)。


 全体の10分の1~9分の1、つまり15分ほどを観た時点で、背筋が凍るような感覚は「確信」へと変わっていく。ここまでで描かれるのは、現在の私たちが置かれた状況の少し前、各国が「緊急事態宣言」を行う前だ。つまり、そこから先は、いよいよ私たちと同じ状況へと移っていく。そして、「その先」も……。覚悟して、続きを観ていただきたい。



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