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『コンテイジョン』我々はどう「動く」べきか――新型コロナを予見した細菌パニック映画

(c)Photofest / Getty Images

『コンテイジョン』我々はどう「動く」べきか――新型コロナを予見した細菌パニック映画


「元通り」の難しさを突きつける終盤



 『コンテイジョン』が描くのは、殺傷性の高い新型ウイルスが全世界に伝染した結果、壊れていく人々の心や生活、果ては社会。それはワクチンが見つかった後も、修復されることはない。


 科学者や医師が不眠不休で治療法や予防法を見つけ、ワクチンを生成しても手放しのハッピーエンドとはならないのだ。劇中、ニュース番組で報道される「WHOは、感染を止めるために必要な量の生産と流通には1年近くかかるとみられています」という“事実”――。映画はその後、ラスト30分をかけて「さらなる騒動」を描いていく。


 ワクチンを巡り、世界で誘拐や恐喝が多発。公平を期すために抽選でワクチンを割り当てても、助かりたい人々や感染してしまった人々には、待つ余裕がない。「この日を境に世界が元通り」など、幻想でしかないのだと本作は突きつける。『コンテイジョン』が徹底してリアルなのは、全体の約3分の1をかけて「その後」を丹念に描いていくところだろう。


 並みの映画なら、治療法の発見をクライマックスに持ってきて、最後はナレーションなり「その後1年近くをかけて世界は平和に戻った」といったようなテロップを入れて済ましてしまうところ。しかし、本作はそんな安直な道を選ばない。この「配分」からは、作り手たちの「真実味を極限まで追求する」という、強い責任感がひしひしと伝わってくる。


 エンタメ性を付加するために、パンデミックを描いたのではないということ。ここで描かれるパニックは、決して誇張したものではないということ。この映画からにおい立つのは、強い警鐘のメッセージだ。そしてそのことを今、本作を観た私たちは痛感している。


 『コンテイジョン』が、新型コロナウイルスの「特効薬」となることは無論ない。そもそも映画は、現在起こっている不幸から直接的に人々を守ることはできない。しかしそれでも、この映画があったおかげで、私たちは今後起こりうるリスクを予測できる。どう動くべきか、或いは動かざるべきか――。傾向と対策を立てられれば、未来に待ち受ける被害をいくらかは軽減できるのではないか。


 また、「人の振り見て我が振り直せ」的な効能もあろう。時期が時期だけに、不安や恐怖心をあおるシーンは確かにある。しかし、観ることで「落ち着き」や「冷静さ」を得られるのもまた事実なのだ。この耐え難いときを耐えるため、我々がこの先を生き抜くため、本作が助けとなる部分は非常に大きい。


良薬は口に苦し――。

未来を往く者の杖、灯ともなりうる映画、それが『コンテイジョン』だ。



文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema」


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