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『プリンセス・ブライド・ストーリー』劇場公開時はヒットせずも、ビデオ化で凄まじい人気を得たファンタジックコメディ

(c)Photofest / Getty Images

『プリンセス・ブライド・ストーリー』劇場公開時はヒットせずも、ビデオ化で凄まじい人気を得たファンタジックコメディ

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『プリンセス・ブライド・ストーリー』あらすじ

風邪をひいた孫に中世を舞台にした「冒険談の本」を読み聞かせる祖父。剣戟・怪物・海賊・仇討ち・巨人・姫様といった盛り沢山の物語に、最初はしぶしぶだった孫は、徐々にとりこになっていく・・。


Index


“おとぎ話“を脱構築したファンタジックコメディ



 『プリンセス・ブライド・ストーリー』はロブ・ライナー監督が『スタンド・バイ・ミー』(86)の翌1987年に発表した、“世界一美しいお姫様”をめぐる恋と冒険のファンタジックコメディだ。日本ではアメリカから一年遅れて1988年に劇場公開されているが、デビュー作『スパイナル・タップ』(84)から始まった、ライナーの黄金期と呼ぶべき十年間に発表した監督作7本の中で、残念ながら最も知名度の低い作品だろう。


 ただしアメリカ本国での人気は凄まじい。アメリカでも劇場公開時に興行的な成功は収めていないのだが、ビデオマーケットの黎明期に「子供に贈りたい映画」「親子で一緒にみたい映画」として大ブレイクし、30年以上を経た今も、世代をまたいで楽しめる傑作として語り継がれている。主演を務めたケアリー・エルウェスの回想録によると、元ローマ法王ヨハネ・パウロ二世やビル・クリントン元大統領からもこの映画の大ファンだと告げられて驚いたという。


『プリンセス・ブライド・ストーリー』予告


 右肩上がりなのは人気だけではない。アメリカン・フィルム・インスティチュートは2002年に本作を「偉大なラブストーリー100本」に選出。2006年には全米脚本家協会が「映画脚本のオールタイム・ベスト」の84位に選ぶなど、批評面での評価もうなぎ登りだ。では、それほど映画がどうしてヒットしなかったのか? ロブ・ライナー監督は、前述のエルウェスの回想録に寄せた序文でこう語っている。


 「劇場公開された時、誰もこの映画をどう売っていいのかわかっていなかった。おとぎ話? 冒険活劇? ラブストーリー? それとも可笑しな風刺劇? 真相はどれもが正解であり、今ではそれらのすべてを超越している。2分間の予告編や30秒のテレビスポットには到底収められるようなものではなかったのだ」(『As You Wish: Inconceivable tales from the making of The Princess Bride』より)


 実際、宣伝方針に困り果てた20世紀FOXは、本作を半ば放棄した。予告編もテレビCMも作られず、ポスターにはメインキャラクターの姿は一人もなく、子供と本を読み聞かせるお祖父さんの図柄が採用された。それも誰一人顔がわからないデザインだった(祖父を演じたのは「刑事コロンボ」のピーター・フォークだったにも関わらず、だ)。



『プリンセス・ブライド・ストーリー』(c)Photofest / Getty Images


 とはいえ『プリンセス・ブライド・ストーリー』というタイトルから、多くの人が子供向けの“おとぎ話”を連想するだろうし、その印象も間違ってはいない。ただ、前述したライナーのコメントからもわかるように、決してジャンルで括れる作品ではない。98分と比較的コンパクトな上映時間にまとまってはいるが、 “おとぎ話”を脱構築して哲学的にアプローチした、見かけよりもはるかに多層的で奥深い作品なのである。


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