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『アンドロメダ...』パンデミックを予言!?未知の病原体と対峙するハードSF(前編)

(c)Photofest / Getty Images

『アンドロメダ...』パンデミックを予言!?未知の病原体と対峙するハードSF(前編)

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ロバート・ワイズ監督のスタイル



 製作と監督を務めたロバート・ワイズは、『ウエスト・サイド物語』(61)、『サウンド・オブ・ミュージック』(65)などのミュージカル、『たたり』(63)、『オードリー・ローズ』(77)などのホラー、『地球の静止する日』(51)、『スター・トレック』(79)などのSFといったように、幅広いジャンルの作品を手掛ける人物だ。


 中でも、第二次世界大戦下の日米海戦を描いた『深く静かに潜航せよ』(58)(*6)では、閉鎖空間が生み出す緊張感の演出が高く評価されたが、それは『アンドロメダ...』においても遺憾なく発揮されている。また同じく『深く静かに潜航せよ』では、日本の駆逐艦発見から魚雷発射までのプロセスを、くどいほど丁寧に見せているが、この機械操作への徹底したこだわりは『アンドロメダ...』にも共通する要素だ。



 例えば、ワイルドファイア研究所における延々と続く身体検査と滅菌処理工程、アンドロメダ病原体のサイズ計測、光学顕微鏡による衛星カプセルの観察、電子顕微鏡用薄膜試料作製など、省力してもまったく問題ない段取りをキッチリ描いている。もちろんこういった要素は、原作の持ち味でもあったのだが、丁寧過ぎる描写に退屈してしまう観客もいるのも事実だろう。しかしハードSFファンには、これがたまらない魅力なのだ。


 だが、アカゲザルを用いて空気感染の可能性を調べるシーンは、ちょっとやり過ぎに感じる。その前にマウスを使った実験を見せているのに、ダメ押しでこの映像が登場するからだ。これは実際に、アカゲザルに一酸化炭素を吸わせて撮影しており、苦しそうにケイレンする描写は本物である。


 もちろん撮影後に獣医が酸素吸入を行い、命は取りとめているのだが、ここまでやる必要があったのかという気がしてしまう。全ての工程は、ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)の監督下で行われたが、現在ならCGで描かれる場面だろう。(*7)


*6 『深く静かに潜航せよ』のストーリーは、太平洋戦争中に任務を外されていた米海軍のリチャードソン中佐が、次期艦長として決まっていた副長のブレッドソーから潜水艦ナーカ号の指揮権を奪い取り、日本海軍の駆逐艦「秋風」への復讐に向かうという内容である。これは『スター・トレック』(79)における、ジェームズ・T・カーク少将(ウィリアム・シャトナー)と、彼にエンタープライズ号艦長の座を彼に渡すことになったデッカー(スティーブン・コリンズ)との対立構造とまったく同じだ。


*7 ちなみに、このアカゲザルやマウスを使った実験工程は原作にも登場し、さらに踏み込んで感染したマウスを真空にさらして破裂させ、その死体に感染力があるかを調べる描写がある。するとアンドロメダ病原体は、宿主が死ぬと自らも活動力を失うことが判明する。これは、ピードモントで死体をついばんでいたハゲタカや、墜落した戦闘機のパイロットを調べる、軍の事故調査班たちが無事だったことの説明になる。しかし映画ではこの実験工程を省略しているため、設定の穴に見えてしまっている。だがこれをきちんと描いたとしても、病原体のサイズ計測シーンに矛盾(死んだマウスが感染力を持っている)が生じてしまう。



宇宙微生物の可能性



 研究者たちは、アンドロメダ病原体の分析を続ける内に、ワイルドファイア計画の真の意味を知ってしまう。それはスクープ衛星を用いて、意図的に大気圏外から微生物を収集し、そこから生物兵器として利用可能な物を探し出すというものだった。しかもこの計画には、最初からストーン博士が関係していたことが、ダットン博士やリーヴィット博士に気付かれてしまう。


 実はクライトンが原作を執筆した当時は、宇宙から地球へ未知の微生物を持ち込む危険性(*8)が、真剣に論じられていた。そして地球外暴露法が制定され、アポロ計画の飛行士たちは、地球帰還後に3週間の隔離が義務付けられている。この検疫は1971年のアポロ14号が最後となり、15号からは省略されるが、正式にNASAの規則から廃止されたのは1977年で、連邦規則から地球外暴露法が正式に削除されるのは1991年である。


*8 2013年には、英シェフィールド大学のミルトン・ウェインライト教授が、27km上空の成層圏まで飛ばした気球で、生物由来と考えられる粒子を発見した。教授は「この大きさの微生物を成層圏まで押し上げる仕組みは存在せず、宇宙由来の生命体の可能性がある」と発表した。


 このように、宇宙から飛来した微生物が地球生命の元になったとする考えを、パンスペルミア説と呼ぶ。英国の著名な天文学者である故フレッド・ホイルと共にこの説の熱心な支持者で、バッキンガム宇宙生物学センターのチャンドラ・ウィックラマシンジ教授は、エディターを務めた「Journal of Cosmology」におけるパンスペルミア説特集で、いくつもの事例を紹介している。


 しかしウィックラマシンジの主張には、あまりにも突拍子もないものが多く、最近は「新型コロナウイルスは、2019年10月に中国北東部に落下した隕石由来だ」と発表している。



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