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『アンドロメダ...』パンデミックを予言！？未知の病原体と対峙するハードSF（前編）

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2020.06.12大口孝之

オッドマン仮説

　ストーン、ダットン、リーヴィットの3名は微生物学の専門家である。しかしホールは門外漢の外科医であり、自分でもなぜこのメンバーに加えられたか疑問に思っている。

　実は緊急時における安全対策として、自動的に核兵器によって自爆する仕組みが、ワイルドファイア研究所に組み込まれていた。これは、危険な病原体を外部に漏らさないための措置だったが、万が一誤って核自爆装置が作動した場合、5分以内なら止められるように設計されていた。その自爆中止用の鍵は、研究所内の1名だけが持つ権利を有しており、そのために選ばれたのがホールだったのである。

　これは、「独身の男性は既婚男性や女性に比べ、的確な回答を出す確率が高い」という、“オッドマン(半端者)仮説”に基づく選択だった(この仮説そのものがクライトンの創作なのだが、何か実際にありそうな説に思わせてしまう巧さがある)。

『アンドロメダ...』(c)Photofest / Getty Images

　だが医者であるホールは、ピードモントの生き残りであるジャクソン老人と、泣き叫ぶ赤ん坊の共通点について悩み続け、老人が胃潰瘍の痛みを紛らわすために、普段アスピリンと、スクイーズ(エタノールとメタノールを混合した、有毒なゼリー状燃料「ステルノ」のこと)を飲んでいることをヒントに、アンドロメダ病原体の弱点を見付け出してしまう。この辺りの展開はミステリー的要素があって、ホールが探偵のように謎を解いていく過程が楽しい。

光過敏性発作

　アンドロメダ病原体の解析が進む内に、物質を直接にエネルギー変換し、逆にエネルギーを物質に変換できる完全生物だと判明する。そして研究者たちは、核爆発は病原体を限りなく増殖させるだけだと気付く。

　ストーン博士は、ピードモントの調査後にここを核爆弾で焼灼するように指示したが、大統領がソ連の警戒を気にして48時間延期していた。もし実際に核が投下されていたら、大惨事になっていたわけである。

　同じ理由で、ワイルドファイア研究所の核自爆装置の解除も要請されるが、それは明日になるとの回答だった。

　すると、研究所内に病原体の漏洩を知らせる警報が鳴る。病原体は変異しており、プラスチックを分解するようになっていた。そのため、ダットン博士のいた解剖室の密封シールが破れたのだ。

　ホールとリーヴィット博士は通路に飛び出してくるが、突然リーヴィットが硬直してしまう。彼女は、赤く輝く警報ランプの点滅に反応し、てんかんを起こしていた。実は光過敏性発作(*9)の持病を持っていたのだが、メンバーから外されるのを恐れ、隠していたのである。

*9 筆者が1997年12月16日に帰宅すると、某新聞社から電話が入った。内容は「アニメ『ポケットモンスター』の「でんのうせんしポリゴン」を見た視聴者の多くが、救急車で搬送される事件が発生したのだが、どんな理由が考えられるか」というものだった。筆者は『アンドロメダ...』を連想し、光の点滅が原因だと考えた。念のため、アニメ撮影会社を経営している友人にも過去の事例を確かめ、これらの情報を記者に伝えた。翌朝、筆者のコメントが紙面に掲載されると、テレビ出演やら雑誌の取材が殺到した。

　その後、各放送局が新作の場合のガイドラインを作り、旧作や海外作品の放送時は輝度差を抑える加工がなされ、CSなどでは激しい光の点滅への注意が促されることがある。

【参考文献】

DVD『アンドロメダ・・・』ジェネオン・ユニバーサル (2012)

「警鐘: 新型コロナウィルス感染時に血栓症発症リスクが増大」一般社団法人日本血栓止血学会 (2020)

大月隆寛/ポケモン事件緊急取材班著: 「ポケモンの魔力―子どもたちを魅了した『ポケモン』とは何か」毎日新聞社 (1998)

文：大口孝之 (おおぐち　たかゆき)

1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2～太陽の響～』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。最近作はNHKスペシャル『スペース・スペクタクル』(19)のストーリーボード。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、東京藝大大学院アニメーション専攻、早稲田大理工学部、日本電子専門学校、女子美術大学短大などで非常勤講師。

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