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『KIDS』伝説の写真家ラリー・クラークが切り取った、アメリカン・ユースカルチャーの光と影

『KIDS』伝説の写真家ラリー・クラークが切り取った、アメリカン・ユースカルチャーの光と影


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Supremeが無料配信



 新型コロナウイルスによって、世界中で大きな被害が出ている。特に甚大な被害が確認されているアメリカの中で、感染者と死亡者が最も多いのがニューヨーク州だ。医療危機にも直面し、一時期は未曾有の危機に陥っていた。


 映画『バニラスカイ』(01)を地でいく、ひと気のないタイムズスクエアの映像を見て、血の気が引いた、という声も聞く。映画や演劇、音楽など、エンタメファンにとってもNYは特別な場所であり、人種・宗教・文化などあらゆる人間的営みが集約される場だからこそ、衝突や共感が生まれ、多くの人を感動させるドラマやストーリーを導いてきた。


 世界中から人が集まり、貧富問わず密集し、人口密度の高い都会を形成していることが、皮肉にも、NYでのウイルス蔓延の原因をつくってしまった理由の一つであることが、残念でならない。


 厳しい外出制限が続く中、NYに本拠地を持ち、今やあらゆるカルチャーに影響力を持つスケーターブランドSupremeが、サイトで一本の映画を無料配信した。1995年に公開し激しい議論を巻き起こした映画『KIDS』だ。監督したのは、アメリカのユースカルチャー・サブカルチャーを語る上で欠かせない伝説の写真家、ラリー・クラークである。



 『KIDS』は、監督処女作・有名俳優なし・低予算・17歳以下鑑賞禁止というハンデばかりの状況にもかかわらず、蓋を開けてみれば、興行成績も批評家受けも抜群に良い結果を残した。


 ストーリーはこうだ。性体験は一回だけの少女ジェニーが友達のHIV検査に立ち会い、ついでに自分も検査を受ける。友人は陰性だったのに、ジェニーは陽性反応が出てしまう。感染させた相手は分かっている。セックス経験の無い少女だけを遊び相手として狙い続けるテリーだ。ジェニーは虚ろな表情で彼を探し、ニューヨークを一晩中さまよい続ける。


 テリーはスケーターであり、映画の大半は彼の日常描写に費やされる。ワシントン・パークでの友達との何気ないゲスな会話、ドラッグ漬けのパーティ、セックス相手探しなど、大人が見たら卒倒しそうな強烈な風景が続く。ただしそこには過剰な演出がなく、彼らはあくまで自然体の姿を見せるだけだ。見下したような大人の目線も、ローティーンの憧れるような目線も、MTVのようなあおる編集もなく、カメラは彼らを追っていくだけ。リアリスティックな生々しさと同時に、音楽の使い方もあいまって、あまりに刹那的で現実離れした彼らの様子はどこかファンタジーのようにも感じてくる。


 本作を撮影していた時、ラリー・クラークは既に50歳前後だったようだが、どうやって若いスケーターたちを演出したのだろうか。そのカギは、被写体のコミュニティに没入する、彼の創作スタイルにあるようだ。



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