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『ナイト・オン・ザ・プラネット』ジム・ジャームッシュ発、地球規模で街の裏側を見つめた都市映画

(c) 1991 Locus Solus Inc.

『ナイト・オン・ザ・プラネット』ジム・ジャームッシュ発、地球規模で街の裏側を見つめた都市映画

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世界中から集まった俳優たち



 『ナイト・オン・ザ・プラネット』の最初の挿話はロサンゼルスだが、最初は男ふたりの物語を考えていたという。ところが、運転手役に想定していた男優が使えなくなり、変更を余儀なくされた。


 その頃、特にキャスティングの件とは関係なく、たまたま、ふたりの女優と話をした。ひとりはジーナ・ローランズ、もうひとりはウィノナ・ライダーだった。進行中の企画の話をしたら、ふたりとも作品に興味を持った。そこで急遽、彼女たちの出演を考え始め、女ふたりを主人公にした物語へと変更した。


 ジョン・カサヴェテス映画を愛するジャームッシュにとって、カサヴェテス映画のミューズであるジーナ・ローランズはもともとお気に入りの女優のひとり。彼女は映画のスカウトウーマン役を演じる。一方、ティム・バートンの『シザーハンズ』(90)などに出演していたウィノナ・ライダーは当時の注目の若手女優で、彼女がボーイッシュな運転手役となる。



『ナイト・オン・ザ・プラネット』(c) 1991 Locus Solus Inc. 


 運転手はハリウッド映画の女優にスカウトされるが、車のメカニックになることをめざす彼女は話を断る。これはハリウッドでのメジャーな映画作りではなく、インディペンデント映画界でわが道を歩むジャームッシュ自身の心情を投影した内容に思えた(ウィノナ演じる運転手は、スカウトウーマンに「I yam what I yam(私は私なの)」と言うが、これはマンガ「ホパイ」の主人公の口癖である)。


 このエピソード以外は、シナリオの段階でアテ書きとなっているキャラも多く、ニューヨーク編のロージー・ペレーズ、パリ編のベアトリス・ダルやイザック・ド・バンコレ、ローマ編のロベルト・ベニーニ、フィンランド編のマッティ・ペロンパーをはじめとする3人のフィンランドの男優たち(登場は4人だが、彼はほぼ寝ている)は最初から俳優たちを念頭に置いて書かれた。


 「だから、もう撮る前から頭の中で70%は映画が出来上がっていた。残りの30%が、撮影時の状況で決まることになっていた」(“sight and sound”92年8月号のインタビューより)


 結果的には世界中の個性的な俳優たちが集まり、世界の断片を見せる企画がスタートすることになった。



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