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『グレムリン』新鋭監督ジョー・ダンテが譲らなかった「ざわつくクリスマス」

『グレムリン』新鋭監督ジョー・ダンテが譲らなかった「ざわつくクリスマス」


ジョー・ダンテが死守したかったものとは?



 ダンテにとってあのセリフは、本作のトーンを決定づける極めて重要なものだった。確かに客はあのシーンで、笑っていいのか、同情していいのか分からなくなる。が、クリスマス=楽しいものとする固定観念にとらわれず、あの忘れがたく、一言では割り切れないザワザワとした感情を観客にもたらすことこそがジョー・ダンテの狙いだった。


 映画の公開から30年以上が経って、物悲しくも狂騒的にも聞こえるテーマ曲に耳を傾けながら改めて「なるほど」と思う自分がいる。『グレムリン』は決して単純に割り切れるような映画ではない。劇中のモグワイのように、可愛いと思っていると途端に表情や姿を変える。可愛くて恐ろしい。楽しくて悲しい。美しく汚らしい。単純で複雑。絶頂でどん底。きらびやかで薄気味悪い――――そんな二律背反の要素を併せ持った存在こそ、モグワイであり、この『グレムリン』という映画なのだ。




 ヒロインの告白のみならず、この映画は観客ごとに全く異なった感想をもたらすだろう。それに観客自身が齢を重ねることでも映画の印象はさらに変化を遂げていくはずだ。『グレムリン』の記憶はこのように、映画が幕を閉じてもなお生き物のように延々と生き続ける。そして人生の折に触れ、あのひとことでは言い表せない複雑な感情を我々の胸のうちに去来させ、ザワザワとさせてくれるのである。あの時、ダンテが死守したのは、そんな魔法だったのかもしれない。


 ポスターに描かれたボックスの中身には、伝説の1984年、スタッフやキャストのかけた魔法が今なお効力を失うことなく詰まっている。私たちはどんな表情を浮かべながらその包みを開こうか。そしてどこからともなく響くメロディを歌うのは、かわいいモグワイか、それとも恐ろしいグレムリンか。さあ、今年も胸ざわつくクリスマスがやってくる――――。



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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『グレムリン』

ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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