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『ドア・イン・ザ・フロア』米アメリカ文学界の巨匠ジョン・アーヴィングを納得させた、新鋭監督の映画化アイデアとその手腕とは。

(c)Photofest / Getty Images

『ドア・イン・ザ・フロア』米アメリカ文学界の巨匠ジョン・アーヴィングを納得させた、新鋭監督の映画化アイデアとその手腕とは。

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原作者を納得させた若き俊英監督のアイデア



 「未亡人の一年」は3つの章から成り、メインの登場人物は4人。不品行で浮気を繰り返す児童文学作家のテッド・コールと、不幸な影を背負った美貌の妻のマリオン。後に小説家となる娘のルース。そしてテッドに助手として雇われ、マリオンとの情事にのめり込む作家志望の少年エディだ。


 3つの章すべてに登場するのはルースとエディで、第一章のルースはまだ4歳、第二章で36歳、最終章では41歳になる(エディは第一章で16歳)。しかし彼らはあくまでも複数いる主人公たちの一人でしかない。そして、むしろこの物語を支配しているのは常に、“そこにいない”人物たちなのである。


 物語が始まった時点で、テッドとマリオンの夫婦はふたりの息子を交通事故で亡くしており、深い喪失感から夫婦の絆は完全に壊れてしまっている。そしてマリオンはまだ4歳のルースを残して行方をくらまし、ルースやエディのその後の人生に大きな影響を与えることになる。テッドもまた中盤で物語から退場する。彼らの死、または不在が、“そこにいる”人たちの人生を否応なしに決定づけてしまう。そんな皮肉な運命のめぐり合わせを、誰かをジャッジすることなくフラットに描くことがアーヴィングは猛烈に上手い。



『ドア・イン・ザ・フロア』(c)Photofest / Getty Images


 アーヴィングによると、映画化企画のほとんどが、ルースがオランダで殺人事件を目撃する第三章をメインにしていたという。殺人ミステリーの体裁を取りながら、テッド、マリオン、エディの奇妙な三角関係が繰り広げられる第一章を回想シーンとして盛り込む。そんな構成にアーヴィングは賛同できなかった。「未亡人の一年」の主題は「家族と喪失」であり、殺人事件を中心にするべきではないと感じていたのだ。


 では、トッド・ウィリアムズはこの長大な物語をいかにして脚色しようと考えたのか? その答えは、原作の2/3を大胆にも捨ててしまうことだった。それも、第二章と第三章を省き、最初の第一章だけを映画にしようと考えたのだ。そしてこの発想こそが、原作者アーヴィングを納得させた最大の理由になった。



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