新たなダーク・ヒーロー
CIAの殺し屋として多くの要人を暗殺してきたアル・シモンズは、上司の策略に嵌められ殺されてしまう。人殺しのシモンズは当然地獄へ落とされるが、愛する妻ワンダに再会するため、魂を悪魔に売り払い地上へ戻す約束をとりつける。しかし、戻されたのは死後5年後。ワンダはすでにシモンズの親友と再婚し、子供ももうけていた。加えてシモンズは死んだ時の焼けただれた姿で戻されたために、やっと会えたワンダにもシモンズだと解ってもらえない始末。
うらぶれた路地で失意に暮れるシモンズのもとに、地獄からの使者だという醜い小男「クラウン」がやってくる。クラウンいわく、天界との戦いで、悪魔の軍勢を指揮する「ヘル・スポーン」にする為に、シモンズを生き返らせたのだと言う。しかし、ワンダを失ったシモンズは、何をする気力も無く取りつく島もない。クラウンはシモンズが就くことになる“上級職”の座を奪わんと戦いを挑む。また天界も悪魔軍を率いる予定のシモンズを狙い、刺客を送りこむ。
『スポーン』(c) 1997 New Line Productions, Inc. All rights reserved.
というのが「スポーン」をとりまく設定である。この白眉は、天界と悪魔軍の戦いを解りやすい「善悪」に落とし込んでいない点だ。地獄の悪魔軍はもちろん、天界の天使軍も人間を守ろうといった気は無く、単なる勢力争いで人間を巻き込んでいるだけなのだ。もちろんこのコミックに登場する「天使」や「悪魔」はキリスト教のそれである。
コミック「スポーン」は、規約の無い自由な条件の元でしか生まれえなかった、新しいダーク・ヒーローと言えるだろう。