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『スポーン』フィギュア・バブルが産んだ地獄のヒーロー、その歪んだ魅力とは

(c)Photofest / Getty Images

『スポーン』フィギュア・バブルが産んだ地獄のヒーロー、その歪んだ魅力とは

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映画『スポーン』の歪んだ魅力



 立ち上げたコミック会社やフィギュア会社が成功し、「スポーン」も単独キャラクターのタイトルとしてアメコミの売り上げナンバー1を獲得と、順風満帆なマクファーレンは「映画製作」の誘惑に取り憑かれる。映画『スポーン』の誕生だ。


 マクファーレンは『羊たちの沈黙』(91)や『セブン』(95)といった、猟奇殺人映画に傾倒しており、コミック版「スポーン」にも連続幼児殺人鬼や狂信的なキリスト教信者を悪役として登場させていた。スポーンの実写映画も猟奇殺人映画の様に、ざらついた感触の暗く不穏な作品にしようと思っていたようだ。


 特に『セブン』へは強く入れ込んでおり、今や伝説となっているオープニングとエンドクレジットを手がけたデザイナー、カイル・クーパーを『スポーン』でも起用している。



 『スポーン』のエンドクレジットは掠れた文字が下から上へ流れていく『セブン』とほぼ同じ手法で、パロディとも受け取られかねないほど寄せられている。音楽もデヴィッド・ボウイとブライアン・イーノによるインダストリアル・ロックだった『セブン』に対し、マリリン・マンソンとスニーカー・ピンプスの共演作と、方向性は全く同じと言って良いものだ。


 しかし、いくら「ダーク」とはいえ「アメコミヒーロー」でもあるスポーンにとって、ハードなイメージとヒリつく音楽は、乖離が否めないものだった。


 主演のアル・シモンズ/スポーンには空手有段者でもあるマイケル・ジェイ・ホワイトを起用。キレのあるアクション場面はサスガなのだが、しなやかで鞭のようなイメージのあるコミック版のスポーンに対し、ゴリマッチョなホワイトは、さらに全身にラテックスの特殊メイクを施され、ややズングリとした印象になってしまっている。また、ハンサムな顔立ちも映画開始早々に焼けただれた姿となり、もったいなさは拭いきれない。


 スポーンの教育係で悪魔の手先「クラウン」はピエロメイクをした乱杭歯の太った小男というトラウマ必須な姿で、これはもちろんバットマンの「ジョーカー」への目配せだが、実在した殺人鬼ジョン・ウェイン・ゲイシー(及び、彼がボランティアで行っていたピエロ姿)の影響も大きくあっただろう。コミックでは際どい軽口や愚痴を吐き続ける不快な存在だ。


 映画版クラウンはジョン・レグイザモが演じたのだが、これが奇妙な方向へ跳ねている。レグイザモは後にスタンダップ・コメディの舞台に立つほど口の達者な根っからのコメディアンで、クラウンに活き活きとした下品な魅力を吹き込んでいる。



 結果、クラウン登場シーンは異様な風貌の男がジョークをまくしたて続ける「爆笑させられる悪夢」といった奇妙な情景となっている。中にはホワイトが確実に吹き出したように見えるカットまで採用されていることからも、レグイザモの暴走の激しさが伺えるだろう。


 作品を牽引する監督にはILMで『アビス』(89)や『ジュラシック・パーク』(93)のCGグラフィックを担当したマーク・ディッペが長編映画の初監督にチャレンジしている。彼の起用はスポーンの一番の特徴と言えるマントの魅せ方への期待であろう。


 その期待は見事に叶えられている。生物の様に蠢くマントはスポーンを助けるために鎧となり、武器となり、八面六臂の活躍を見せる。その様子が当時の最新CG技術で表現された。また、クラウンの肉体破壊をしながらのジョークや、真の姿ヴァイオレイターへの変身シーンはディッペの面目躍如となっている。


 しかし、監督の仕事はそれだけでは無い。CG映像で名を上げたディッペだったが、俳優の暴走を止めるほどの演出力や、原作者でもあるプロデューサーの押しをかわすほどの経験値は無かった。


 結果、映画『スポーン』は魅力と欠点が分かち難く混在する、奇妙で歪な問題作として仕上がったのだった。



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