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『レオン 完全版』寡黙な男と、雄弁な映像――“想い”を誘発する「魅せ方」の妙

『レオン 完全版』寡黙な男と、雄弁な映像――“想い”を誘発する「魅せ方」の妙

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衣装を「替える」「着る」「脱ぐ」が意味する心理描写



 ビジュアル面での“キャラ立ち”が非常に利いている『レオン』だが、レオンとマチルダの関係性の変化としても、衣装が効果的に使われている。


 「カゼの防止」としてニットキャップをかぶるレオンに影響されたマチルダも、途中からニットキャップをかぶり、そろいのサングラスを装着する。憧れの存在に近づこうと健気にふるまうマチルダの純粋さが垣間見えるシーンだ。


 ただその中でも、マチルダは派手な色のニットキャップを好んで着ており、彼女のガーリーな趣味が透けて見えるのも重要。レオンからは「殺し屋なら、床より明るい色の服は着るな」と言われていても、従うことはない。その点が、「殺し屋になりたい」と思う彼女の覚悟の脆弱さ――本人にとっては精一杯の決意だが、実がまだ伴っていない状態を示してもいて、切なさを演出している。


 他にも、マチルダやレオンがマリリン・モンローやチャールズ・チャップリン、ジョン・ウェインの物まねをするシーン、レオンが豚のイラストがプリントされたミトンを使ってマチルダを和ませるシーン、レオンが特殊部隊の服に身を包んでカモフラージュを図るシーン、マチルダがスタンスフィールドのオフィスに乗り込むシーンの服装など、本作での衣装はただ実用的なものではなく、「着ることで変われる」ものとしての意味合いが強い。




 うがった見方かもしれないが、スタンスフィールドが「スーツが破れた」と、床をはいずるマチルダの父親に1発ずつ銃弾を撃ち込む残虐なシーンも、服に対する自意識の表れといえるかもしれない。彼は劇中で衣装を替えないため、よりその感覚が強まっている。


 逆に、衣装を「脱ぐ」行為は安心や本音の表れとして配置されており、幾度か描かれるレオンがシャワーを浴びるシーンでは、数少ない彼の“素顔”が覗く。排水溝に流れていく血を複雑な表情で眺めていたり、マチルダの前では見せない、痛みに顔をゆがめる姿だったり……。シャワーシーンは多くの映画(特にヒットマンもの)で重要な意味を持つが、『レオン』では衣装に個性を出しているぶん、より効果を発揮している。


 「脱ぐ」という部分だと、レオンがマチルダに懇願され、ベッドに横たわるシーンも印象的だ。殺し屋である彼は「片目を開けてソファで座って寝る」クセが身についており、19歳でこの稼業を始めてから、安眠とは程遠い生活を送っていた。しかし、マチルダに靴を脱がされてベッドに横たわることで、安らぎの感覚を再び取り戻す。短いシーンではあるものの、観る者の涙を誘う重要な要素といえるだろう。



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