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『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を観た後は…⁉︎ “原型”や派生作品を楽しんでみよう!

(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を観た後は…⁉︎ “原型”や派生作品を楽しんでみよう!

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『鬼滅の刃』への理解が深まる、「原型」2作



 また、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に該当する原作第7巻・8巻を読んで、差異を見比べる楽しみ方もある。例えば、煉獄の強さにほれ込んだ炭治郎たちがハイテンションになるシーンは、原作からもう少しシーン自体が伸びているし、鬼殺隊を束ねる産屋敷家が墓参りを行う冒頭シーンや、終盤でカラスの目に涙が浮かぶシーンは、映画オリジナルだ。


 煉獄と猗窩座のバトルシーンを中心に、アクションシーンも大幅に強化されており、善逸が「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃」を使用するシーンでは、あえて汽車の外側からの視点を入れて、彼が一瞬で車両を移動したことがよくわかるように、演出されている。炭治郎が「水の呼吸」から「ヒノカミ神楽」へと変わるシーンの流麗な演出も見事で、魘夢による「強制昏倒睡眠」を打ち破るまでもよりじっくりと描き、エモーショナルな味付けを施している。


『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』予告編第1弾


 反対に原作では、より詳細なシーンや設定の説明が入るため、無限列車を統べる鬼・魘夢による「血鬼術」の発動条件などが、理解しやすい。また、吾峠氏ならではのスピーディなコマ割りや、おどおどろしい擬音のデザイン、独特なセリフ回しなどをよりじっくりと楽しむことができ、これが外崎春雄監督の手によって映像化された際に、どう変換されたのか、を観ていくのも一興だ。


 また、『鬼滅の刃』の原作とアニメ以外では、『鬼滅の刃』の前身である『過狩り狩り』、さらにはプロトタイプ『鬼殺の流』を読むと、『鬼滅の刃』の世界観がどう構築されていったのかが、さらに深く楽しめる。


 『過狩り狩り』は、『吾峠呼世晴短編集』に収録されているほか、公式サイトで無料公開中。珠世や愈史郎といった本編にも登場するキャラクターが見られるほか、鬼殺隊の選抜試験と同様の描写、カラスの伝令、血鬼術など、多数の要素が共通している。ちなみに本作では鬼は「吸血鬼」として描かれ(異国の吸血鬼が日本にやってくるという設定が興味深い)、さらに鬼サイドの物語になっている。


 大きな違いといえるのは主人公で、隻腕で盲目、顔には大きな傷があり無口という、なかなかにハードな設定に。その後、本作をブラッシュアップした『鬼殺の流』が制作されるが、そちらでは上記に加え、義足になっている。キャラクターデザインは、炭治郎の兄弟子となる冨岡義勇に近い。


 こちらでは主人公こそ違うが、基本的な設定はほぼ『鬼滅の刃』に近い。鬼側の心情が描かれるという『鬼滅の刃』に特徴的な演出も見られ、第3話の「若い娘がさらわれる」展開は、『鬼滅の刃』の「沼の鬼」のエピソードに生かされている。ここから主人公の変更や、ギャグパートの追加など、よりエンタメ性を付加したものが、『鬼滅の刃』と考えると、もともとあった吾峠氏の作家性に、何をブレンドしていくことでより広く読者に受け入れられるようにしていったのか、そのプロセスが見えてくる。


 この『鬼殺の流』は、「鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録」に掲載されている。初代担当編集の片山達彦氏による裏話も収録されており、「明るくて普通のキャラクター」を求められ、脇役だった炭治郎が主人公に昇格した、という制作秘話も確認できる。そのほか、義勇の特徴的な羽織に秘められたエピソードや煉獄の好物などが吾峠氏によって語られている。原作の終盤近くまでの情報がきっちりとまとめられているため、ファンにとっては必携アイテムといえるだろう。



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