2020.10.21
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現代の映画界を担う名匠の”原点”
2005年、若手の登竜門として知られるサンダンス映画祭にて、一人の監督が観客の熱狂的な祝福とともに長編デビューを果たした。ジーンズにセーターという飾らない格好で、恥ずかしそうに両手をポケットに突っ込みながら壇上に立つ彼の名は、ライアン・ジョンソン。この先、一作一作で手堅い評価を積みかさね、12年後には『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(17)の監督にまで上り詰める人物だ。未来へ向けて伸びゆく輝かしい道筋を、当時の彼はまだ知る由もない。
結局、サンダンス映画祭で上映された『BRICK ブリック』は審査員特別賞を受賞。本作の制作に8年もの歳月をかけたジョンソンにとってはお釣りがくるほどの高評価であり、天下のサンダンスに「お墨付き」をもらったことで、これまで全く先行きの見えなかった人生にも一気に光が差し込んできた。本作無くして、のちの成功なし。タイトル同様、まさに煉瓦(ブリック)のごとくキャリアを支える重要な布石となった作品なのである。