(C)2012 LOOPER DISTRIBUTION,LLC.ALL RIGHTS RESERVED
『LOOPER/ルーパー』タイムスリップ、特殊メイク、超能力…、複雑な要素をクレバーに織り成すライアン・ジョンソンの手腕 ※注!ネタバレ含みます。
2020.11.21
全く異質のものを近づけた特殊メイクの力
本編をご覧の方はお分かりだと思うが、この映画には設定上の仕掛けがある。これを踏まえないことには埒があかないので、以降はネタバレを原則とさせていただきたい。
つまるところ『LOOPER/ルーパー』では、ジョセフ・ゴードン=レヴィット(以下JGL)とブルース・ウィリスが二人一役、つまり同じジョーという人間の「ヤング版」と「オールド版」をそれぞれ演じている。
当然ながら、二人の俳優は外見も中身も随分違う。素材として全くの別物と言っていい。いったいどうやってジョセフとブルースを結びつけたのか。
その”魔法”を担ったのが、天才アーティスト、辻一弘(現在は”カズ・ヒロ”の名で活動)である。今や『ウィンストン・チャーチル』(17)や『スキャンダル』(19)でアカデミー賞の常連受賞となった彼は、かつて『G.I.ジョー』(09)でJGLと仕事をしたことがあり、その関係性を糸口に、本作の相談が持ち込まれたのだとか。
『LOOPER/ルーパー』(C)2012 LOOPER DISTRIBUTION,LLC.ALL RIGHTS RESERVED
全く同じ相貌にすることは不可能だし、強引に似せようとすると違和感が生じてしまう。そこで辻が提案したのは、二人の特徴的な違いに目をつけ、そのギャップを埋めていくという作業だ。具体的に言うと、瞳の色味はカラコンで調整し、あとは鼻と耳と、そして唇を物理的に形作る。辻はJGL側にこれらの特殊メイクを施すことによって、外見の異なる二人の印象を少しずつ近づけていった。
ただし重要なのは、映画にとって「似せること」がメインになってはいけないという点である。一目見た瞬間から特殊メイクがバレバレでは本末転倒。要は「気付かれぬように効果を出す」ことが求められているのであり、そうやって初めて『LOOPER/ルーパー』の物語は淀みのない流れを獲得することができたのだ。