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  4. 『LOOPER/ルーパー』タイムスリップ、特殊メイク、超能力…、複雑な要素をクレバーに織り成すライアン・ジョンソンの手腕 ※注!ネタバレ含みます。
『LOOPER/ルーパー』タイムスリップ、特殊メイク、超能力…、複雑な要素をクレバーに織り成すライアン・ジョンソンの手腕 ※注!ネタバレ含みます。

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『LOOPER/ルーパー』タイムスリップ、特殊メイク、超能力…、複雑な要素をクレバーに織り成すライアン・ジョンソンの手腕 ※注!ネタバレ含みます。

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負の連鎖(ループ)を断ち切るために



 もう一つ、鮮烈に突き刺さるのは、これから起こる「未来絵図」にヤング・ジョーが思いを巡らせるくだり。そこでは、母を殺されたシドが復讐心にかられて凶暴化し、裏社会を牛耳っていく。まさに負の連鎖が一瞬のイメージとして広がっていく場面だ。


 怪物を生むか、それとも希望の種を蒔くのか。すべては今この瞬間、自分の決断にこそかかっている。彼は最後にそのことに気づき、自らが絡め取られた「負の鎖」を断ち切ろうとする。序盤で繰り返された「ループを閉じる」という言葉がこういう形で巡り巡ってくることにグッとくるし、それはおそらく新たな光に満ちたループを開くことをも意味するはずだ。


 すべてが収束した後、サラがヤング・ジョーの亡骸を優しく撫でる様子は、一晩を過ごした男女の親密さではなく、まるで母親が息子を寝かしつけているかのよう。序盤にジョーが語っていた「よく母親がやってくれた撫で方」とまさに同じやり方だ。おそらく彼はこの瞬間をずっと渇望し続けてきたのだろう。そして、たとえ間接的であったとしても、母の愛情に触れながら最後の眠りにつくことができた————。

 

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 単なるサイドストーリーかと思われた「ジョーの生い立ち」をめぐるエピソードは、かくも随所に印象的なセリフや描写を散りばめつつ、ある意味、作品の核心でもあったかのように、静かに絡み合い、重なり合い、そして丁寧に集約されていった。口にするのはたやすいが、やっていることは極めて高度だ。なぜなら、こうすることで本作は、現在(ヤングジョー)と未来(オールドジョー)と、そしてサラとシドに投影されるジョーの過去が、同じ場所にて三つ巴でせめぎ合う特別な物語となりえたのだから。


 この壮大な時間軸に貫かれた物語を、複雑さに溺れることなく、胸を揺さぶる重厚さで織り成したライアン・ジョンソン。彼がやがて『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』(17)の監督に抜擢され、若くしてハリウッドを代表する地位にまで上り詰めたのも深く納得なのである。



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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『LOOPER/ルーパー』

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発売・販売元:ポニーキャニオン                                                                                    

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