高次の存在が人類に“力”を授けるSF映画の系譜と、受け継がれる“印”
まず外せないのが、スタンリー・キューブリック監督とSF作家アーサー・C・クラークが手がけた名作『2001年宇宙の旅』(1968年)だろう。黒い石板のようなモノリスが、原始時代の地上に出現したことで、影響を受けたヒトザルが動物の骨を武器として使うようになる。さらに、宇宙開発が始まった現代の月面、そして木星の近くにも、モノリスは人類の進化を導くように出現する。
『インターステラー』は、モノリスに似た外見の人工知能ロボット、TARSとCASEを登場させた。そしてもちろん、『メッセージ』の黒く細長い宇宙船も、楕円形ではあるものの、地表から少し浮かんで屹立する姿がやはりモノリスを彷彿とさせる。このようにモノリスを想起させるイメージは、「高次の存在が人類に力を授ける物語」を受け継いだ“印”としても機能している。
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カール・セーガン原作、ロバート・ゼメキス監督の『コンタクト』(1997年)もまた、この類型に収まるSF映画だ。地球外知的生命体探査「SETI」プロジェクトの研究者エリー(ジョディ・フォスター)は、異星人からの電波を受信。これを解読して得た設計図を基に宇宙間移動装置が建造され、エリーが自ら乗り込むことになる。劇中、エリーが搭乗する第2の宇宙間移動装置は北海道に建造されるが、『メッセージ』では『コンタクト』へのオマージュとして、ヘプタポッドの宇宙船が出現する世界12カ所の中に北海道が選ばれた。これもまた、同じ物語の類型を受け継いだ印と言えるだろう。