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『メッセージ』製作陣がエンディング変更を余儀なくされた傑作SFとは?

(c) 2016 Xenolinguistics, LLC. All Rights Reserved.

『メッセージ』製作陣がエンディング変更を余儀なくされた傑作SFとは?

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良い贈り物ばかりとは限らない



 高度な知能を持つ異星人が、良いものばかりを人類に授けてくれるとは限らない。『スピーシーズ 種の起源』(1995年)では、地球外生命体から届いた未知のDNA情報と人間のDNAを結合させ、科学者らが新たな生命体を作り出す。こうして誕生したシルは、驚異的なスピードで成長し、体力・知力・凶暴性で人間をはるかに凌ぐ存在になってしまう。


 この作品もまた、「高次の存在が人類に力を授ける物語」の類型に収まるが、科学や技術の進歩が恩恵をもたらすだけではなく、逆に人間にとって危険や損害をもたらす可能性もあるのだという警鐘が込められている。『2001年宇宙の旅』でヒトザルが放り上げた骨が軍事衛星に変わる有名なモンタージュを思い出そう。あるいは『メッセージ』において、ヘプタポッドが提供しようとするものを「武器」と「道具」のどちらに解釈するかで対立するシーンを。強大な力は、恩恵にもなれば害悪にもなる。どう解釈し、どう使うかは人間次第なのだ。



『メッセージ』(c) 2016 Xenolinguistics, LLC. All Rights Reserved.


物語類型の源流をギリシャ神話のプロメテウスに見る



 「高次の存在が人類に力を授ける物語」の源流を、SFというジャンルが成立するより前にさかのぼって探すなら、ギリシャ神話のプロメテウスが天上の火を人間に与えた話が有力候補として挙げられよう。火を手に入れた人間は暖を取り調理もできるようになった一方で、武器を作り戦争を起こすことにもなった。


 リドリー・スコット監督の『プロメテウス』(2012年)も当然、このギリシャ神話のエピソードを踏まえている。冒頭、巨躯の異星人が自らのDNAを変化させて太古の地球にばらまき、人類の起源となる(ここでは、人類それ自体が異星人からの授かりものだ)。あるいはまた、最新の技術で作られたアンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)が、続編の『エイリアン:コヴェナント』(2017年)でたどる運命も、同じテーマを反復する。


SF映画屈指の傑作ホラー『エイリアン』を作った天才たちとは



『メッセージ』(c) 2016 Xenolinguistics, LLC. All Rights Reserved.


 科学的な新発見や研究開発による新技術といった「大いなる力」を、どう使えば人類の幸福につなげられるのか。この古くて新しいテーマは、永遠に答えの出ない究極の難題だからこそ、SF映画のクリエイターたちも飽くなき挑戦を続けるのだろう。


参考:

‘Arrival’ Writer Eric Heisserer on How ‘Interstellar’ Forced Him to Change the Ending

http://collider.com/eric-heisserer-arrival-interview/



文: 高森郁哉(たかもり いくや)

フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。



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『メッセージ』 Blu-ray

発売中 ¥2,381(税抜)

発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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