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『刑事ジョン・ブック 目撃者』ハリソン・フォードとピーター・ウィアーのキャリア分岐点を提供したプロデューサーの努力とは

(c)Photofest / Getty Images

『刑事ジョン・ブック 目撃者』ハリソン・フォードとピーター・ウィアーのキャリア分岐点を提供したプロデューサーの努力とは

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スターから演技派へ、H・フォードの転身



 物事が動き出すと、企画は思わぬ人物の興味を惹いた。ロバート・レッドフォードが主演したいと打診してきたのだ。フォードには「スター・ウォーズ」と「インディ・ジョーンズ」があったとはいえ、レッドフォードの方がはるかに実績のある格上のスターだった。


 しかしフェルドマンは、一旦レッドフォードが関われば、納得するまで脚本の手直しを求めてくるとわかっていた。そして多くの場合、リライトが終わる頃にはレッドフォードは別の企画に興味を移してしまい、一から主演俳優を探し直すことになる。もはやフェルドマンは、これ以上待つつもりはなかった。


 監督に就任したウィアーは、パラマウントの計らいでウィスコンシン州のフォードの農場を訪ねている。パラマウントの重役陣もウィアーの才能に賭けており、「フォードとうまく行かなくても君が監督だ、主演は別の俳優を探す」と明言していたという(もしかしたらレッドフォードに心惹かれていたのかも知れない)。しかし懸念は杞憂に終わった。ウィアーとフォードとは最初から意気投合し、たちまち監督と俳優として支え合う関係を築いたのだ。



『刑事ジョン・ブック 目撃者』(c)Photofest / Getty Images 


 フォードとウィアーは役割を分担した。ウィアーはアーミッシュの文化をリサーチし、フォードは役作りのためにフィラデルフィア警察の殺人課に2週間密着した。殺人犯に逮捕状を突き付ける危険な手入れに同行したこともあったという。フォードには多くの映画で刑事や捜査官に扮しているイメージがあるが、現実世界の刑事を演じたのは『刑事ジョン・ブック~』が初めてだった。


 脚本にはアーミッシュの村総出で納屋を建てる大がかりなシーンがあった。フォードは下積み時代に腕のいい大工として生計を立てており、セルジオ・メンデスの自宅スタジオの施工に携わったこともあった。大工の手仕事は主人公のジョン・ブックという人物を知る重要な手がかりであり、フォードにはうってつけの役だった。


 またアーミッシュの未亡人レイチェルとのロマンチックな場面では、ウィアーからカーラジオから流れる曲を選ぶように言われ、サム・クックの「ワンダフル・ワールド」をピックアップした。フォード自身にとっても思い出の曲だったからだ。ジョン・ブックはフォード自身とも限りなく近い役になっていった。


 レイチェル役にほぼ新人のケリー・マクギリスが抜擢された時、フォードは経験不足だと難色を示した。ところがウィアーは「僕を信用できないなら、君はこの映画をやるべきじゃない」と断固とした態度を示し、フォードも従った。ウィアーは初めてのハリウッド映画でも臆するところがなく、フォードもまたウィアーを信頼し、リスペクトしていたのだ。



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