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『刑事ジョン・ブック 目撃者』ハリソン・フォードとピーター・ウィアーのキャリア分岐点を提供したプロデューサーの努力とは

(c)Photofest / Getty Images

『刑事ジョン・ブック 目撃者』ハリソン・フォードとピーター・ウィアーのキャリア分岐点を提供したプロデューサーの努力とは

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フェルメールの名画に影響を受けた映像美



 通常の刑事ものとは一線を画す、詩情豊かな映像美を生み出した撮影監督はジョン・シールで、ウィアーがオーストラリアから連れてきた。シールにとっても初めてのハリウッド映画だった。二人はフィラデルフィア美術館で開催されていた「17世紀のオランダ画家展」で見たフェルメールの絵画を気に入り、シールの言葉を借りれば“臆面もなく”フェルメール独特の光を取り入れた。アーミッシュの村の屋内シーンの多くで、左方向から柔らかい光が射しているのは明らかにフェルメールの影響を受けている。


 撮影は順調に進んでいたが、パラマウントの宣伝部はアーミッシュの表現で“死”を意味する「Called Home」がタイトルでは宣伝しづらいと難色を示し、「Witness(目撃者)」に変更されることになった。いかにも刑事ものらしいタイトルだが、物語を端的に言い表してはいた。邦題の『刑事ジョン・ブック 目撃者』からは本作が醸している詩情の要素がさっぱり感じられないが、原題が「Witness」になった経緯を思えば仕方なかったのかも知れない。



(c)Photofest / Getty Images 


 撮影はストライキに入る三日目に終えることができたが、ポストプロダクションで大いにつまずいた。フェルドマンはとある大物編集者を確保したのだが、仕上がってきた映画の前半部分は、まるでテレビの刑事ドラマの1エピソードのように見えた。ジョン・シールがフィルムに焼き付けた美しい風景やアーミッシュの生活が切り捨てられていたのだ。


 ウィアーはオーストラリアに戻って編集作業をやり直すことを要求する。それでは作業の進捗をチェックすることもできず、スタジオやプロデューサーが最も嫌う状況だ。しかしフェルドマンは「妻でも恋人でも同伴していい」という条件でオーストラリアに長期滞在してくれる編集者を探し回り、なんとか業界20年のベテラン、トム・ノーブルと契約する。ウィアーとノーブルはシドニーに発ち、その後10週間は音沙汰が一切なかったという。プロデューサーにしてみれば、地獄のような待ち時間だっただろう。


 ようやくウィアーから連絡があり、フェルドマンとフォードはお互いの妻を伴ってオーストラリアに飛んだ。なんとしてもパラマウントの重役陣より先に結果を見ておきたかったのだ。上映前のフォードは非常にナーバスになっていたというが、完成した作品は素晴らしい出来栄えだった。



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