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『キル・ビル Vol.1』タランティーノが愛したジャンル映画:カンフー映画編

(c)Photofest / Getty Images

『キル・ビル Vol.1』タランティーノが愛したジャンル映画:カンフー映画編

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多くのカンフー映画のオマージュたち



 「ブライド」とクレイジー88のメンバーが死闘を繰り広げる「青葉亭」は中央に吹き抜けのダンスフロアがあり、二階は回廊になっている贅沢な創りだ。これはキン・フー作品を始めとした香港アクション/武侠映画に登場する、食堂を兼ねた宿と同じ造りである。それらの作品では、一階と二階をワイヤーワークやトランポリンで行き交い、立体的なアクションが繰り広げられ、そのアクション設計は『キル・ビル Vol.1』でもなされている。ちなみに、MCU『ブラックパンサー』(18)に登場する韓国のカジノもこの回廊の構造を模しており、やはり上下階を行き交うアクションが展開されていた。


 クレイジー88の武器の一つ手斧は、70年代のカンフー映画で主人公を襲う、いわゆる「モブキャラ」たちがよく使っていた武器である。チャウ・シンチーの『カンフー・ハッスル』(04)でも悪党の手下たちは手斧を武器にしているが、その名前からして「斧頭会」である。


『カンフーハッスル』予告


 ちなみに『カンフー・ハッスル』も過去のカンフー映画の引用に溢れた作品で、舞台となる団地「豚小屋砦」も「青葉亭」同様に、中央が吹き抜けの構造になっている。また、太極拳の達人は『燃えよドラゴン』(73)でブルース・リーのスタント・ダブルを勤めたユン・ワー。彼の奥さんで常にくわえタバコの大家が悪党のボスを車の中で脅すハンドサインは、『ドラゴンへの道』(72)でブルース・リーが悪党のボスに見せたものの完コピである。


 「ブライド」が刀を鏡替わりに後ろにいる敵を伺う場面は、女性アクション・スター、アンジェラ・マオが主演した『DEADLY CHINA DOLL』(73/原題『黑路』)からの引用だ。アンジェラは、『燃えよドラゴン』でブルース・リーの妹を演じたことで良く知られている。日本の東映は当時、アンジェラを招致して映画を作る企画を立て、「トラック野郎」シリーズの鈴木則文監督による脚本も書かれたが、招致自体が流れてしまい、その脚本は志穂美悦子の最初の主演映画『女必殺拳』(74)となっている。




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