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『るろうに剣心 最終章 The Final』心情描写なくして、アクションは映えず――作品を貫く、“生身の熱”

©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning 」製作委員会

『るろうに剣心 最終章 The Final』心情描写なくして、アクションは映えず――作品を貫く、“生身の熱”

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モーション(動作)の起因はあくまでエモーション(感情)



 「追憶編」は、そもそも回想シーンとして一部分が実写映画第1作『るろうに剣心』でも描かれているエピソード(窪田正孝がキーパーソンとして出演している)であり、「人誅編」含め、制作者としては「いつか実写化しなければならなかった」、ファンとしては「いつか実写化してくれることを待っていた」ものであっただろう。


 もちろん、佐藤健をはじめとした俳優たちの人気ぶりや、コンテンツ自体のパワーもあるが、やはり「『人誅編』『追憶編』が実写化される」というのは、特別な意味を持つ。いわば、ライト層とコア層が同時に動く“イベント”なのだ。新型コロナウイルスの感染防止のため多くの作品が公開延期を迫られ、その結果観客(予備軍)の興味が薄まり、盛り上がりがしぼんでしまった作品は多々あるが、約1年の公開延期を経た本作に関してはむしろ人気と期待、勢いが増している感さえある。状況次第ではあるが、シリーズ最高興収の52億円を突破するポテンシャルを十二分に秘めているのだ。


 ではここからは、作品の中身について紹介していきたい。実写映画『るろうに剣心』シリーズの華はなんといっても限界を突破し、日本映画史に新たなスタイルを確立した“アクション”と言っていいのだが、大友啓史監督が本作のキーワードとして挙げているのは「モーション(動作)」と「エモーション(感情)」。昨年末に公開された、佐藤健との対談映像の中でも「感情のぶつかり合いを、どうアクションに反映させるか」と語っており、あくまで先立つのはエモーションであることを示唆している。


『るろうに剣心 最終章』佐藤健×大友啓史監督 対談


 つまり、『るろうに剣心』を語る上で、エポックメイキングなアクションの凄さは勿論重要なのだが、それ“だけ”では足りないということだ。モーションが「何のため」に行われるのか、その原点であり出口でもあるのは、エモーションであるということ。もっといえば、『るろうに剣心』のアクションはキャラクターの感情に起因するため、総じて熱量が高くなる。故に、観る者の没入感をも高めてくれ、心を熱狂させるのだろう。


 そしてそれは、原作の「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」から受け継いだ精神であり、大友啓史という映像作家がこれまでの活動で表現してきたものとも合致する。そのため本稿では、より「エモーション」に重きを置いて、作品の深部に迫ってゆきたい。




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