©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning 」製作委員会
『るろうに剣心 最終章 The Final』心情描写なくして、アクションは映えず――作品を貫く、“生身の熱”
2021.04.23
役者本人が「限界に挑む」アクション
映画『るろうに剣心』シリーズのアクションの凄さ、それはやはり「生身」であることだろう。佐藤健をはじめとする出演陣の驚異的な奮闘によって、動きはもちろん、汗や息切れ等々、全てが本物という極限の臨場感あふれるアクションを生み出した。この辺りは、YouTubeにて公開されているメイキング映像集「るろうに剣心『Road to Kenshin』」に詳しい。
例えば、以下の二つの映像では、佐藤と綾野剛(外印役)、佐藤と神木隆之介(瀬田宗次郎役)のアクションの稽古風景から撮影風景までが収められている。これを観ればわかる通り、役者本人が鍛錬を積み、極限に挑むといった部分が、本シリーズの大きな売り。
『るろうに剣心』メイキング映像
『るろうに剣心』メイキング映像
剣心と相楽左之助(青木崇高)、斎藤一(江口洋介)、四乃森蒼紫(伊勢谷友介)の4人が志々雄真実(藤原竜也)に挑む『るろうに剣心 伝説の最期編』のクライマックスシーンでは、劇中さながらに疲労困憊しながら、気力を振り絞って過酷なアクションに挑む俳優陣の姿が映し出されている。現場に、リアルなエモーション→モーションがあったことがまざまざと伝わってくる映像だ。
『るろうに剣心』メイキング映像
『るろうに剣心』のアクションには、ざっくり分けて3つの要素があるように感じる。ひとつは、時代劇としての所作をベースに組み立てられた「伝統的な殺陣」。もうひとつは、『マトリックス』(99)や『グリーン・ディスティニー』(00)的な、ワイヤーアクションを取り入れた「魅せる剣舞」、最後は『ボーン・アイデンティティー』(02)以降に隆盛した、「実戦形式のリアルファイト」だ。この3つのアクションの特性を組み合わせ、「一対多数を想定した」剣術である飛天御剣流のエッセンスを混ぜ込んだ本作のアクションは、壁走りやブレイクダンス的なアクロバティックな動きから、相手との間をじりじり詰めて放つ抜刀術まで、動も静も、あらゆるアクションの技が詰め込まれている。
そして、『るろうに剣心 最終章 The Final』で登場する雪代縁(新田真剣佑)には、これまでのキャラクターとは一味違う特長がある。ひとつは、武闘家&剣術使いであるということ。剣術と武術の両方に秀でた戦闘の達人であり、日本刀よりもサイズが大きい“倭刀”を使った剣×拳の合わせ技「倭刀術」を使う。そのため、『るろうに剣心 最終章 The Final』では「剣心が縁に蹴られて吹っ飛ばされる」動きや、「縁が素手で警官隊を圧倒する」といった「刀に依存しない」アクションも登場している。
また、縁の衣装にも注目いただきたい。彼は戦闘時、上着を脱ぐとノースリーブ状態になっている。これはすなわち、身体を作り込まなければバレてしまうということ。新田真剣佑は、縁になりきるために徹底的に肉体改造を図り、撮影時には本番開始直前まで腕立て伏せを行い、パンプアップ(特定の箇所に集中的に負荷を与えることで、一時的に筋肉を膨らませること)を図ったという。
『るろうに剣心 最終章 The Final』予告
なお、前述のメイキング映像には、様々なスタッフが苦心を重ねて最高のシーンを創り出そうと奮闘する姿も、余すところなく記録されている。どのセクションにおいても、エモーション→モーションを創り出す土壌がしっかりと出来上がっていたことが見えてくる。モーションが高まるということは、役者であれば役とシンクロし、役を「生きる」状態になっている状態ともいえる。死力を尽くすことで、ようやくその境地にたどり着ける――。本作は、関わったスタッフ・キャストからの途方もない熱で出来上がっているのだろう。