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『るろうに剣心 最終章 The Final』心情描写なくして、アクションは映えず――作品を貫く、“生身の熱”

©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning 」製作委員会

『るろうに剣心 最終章 The Final』心情描写なくして、アクションは映えず――作品を貫く、“生身の熱”

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少年漫画の可能性を押し広げた、原作漫画



 そもそも「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」は、連載開始前に主人公・緋村剣心の年齢を30歳以上に設定した際、「少年漫画の主人公としては年齢が上過ぎる」との理由で28歳になった、というエピソードの時点で、なかなかに異質な作品だ。


 これは江戸から明治の時代の移り変わりと、幕末の混乱を描く内容から。池田屋事件や鳥羽・伏見の戦い等々、史実に即した内容を盛り込むために年齢設定が生じたのだが、とはいえ「暗殺者の贖罪の物語」というテーマから見ても、ドラマ重視のシリアスなものであったことは確か。「剣は凶器。剣術は殺人術。どんな綺麗ごとやお題目を並べても、それが真実」という序盤のセリフからも、本作独自の“重み”を察することができる。


 「追憶編」においては巴というヒロインを死亡させ、「人誅編」においてもあるキャラクターがたどる運命についてギリギリまで悩みぬいて物語を紡いでいったというから、リアリストな視点と、夢を与える少年漫画というフィールドの狭間で相当苦心したのだろう。現実に軸足を置き、どこまで振りきるか。そのひとつの“解答”を示した「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」は、その後の作品に多大な影響を与えたパイオニアといっていい。



『るろうに剣心 最終章 The Final』©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning 」製作委員会


 もちろん、少年漫画らしい「必殺技」「修行シーン」「ダイナミックなバトル」は多々あるのだが、不殺を誓った剣心が剣をふるう=モーションを起こすのは、いつだってそこに「他者を助けたい」という感情があればこそ。剣心が師匠の比古清十郎(実写映画版では福山雅治が演じた)から剣術・飛天御剣流の奥義「天翔龍閃」を伝授された際に諭されたのは、「生きようとする意志」。「他者を助けるために、自分自身の命を軽んじてはならない」という教えは、まさに「エモーションありきのモーション」といえるのではないか。このように、エモーションなきモーションを起こすキャラクターは劇中にほぼ存在せず、ヴィラン(敵)であっても志々雄は「国盗り」、縁は「復讐」のために動く。


 最もエモーションがないキャラクターは、実写映画版で神木隆之介が演じた瀬田宗次郎だろうが、彼もまた「過去のトラウマで感情を封印した」ことが明かされ、剣心との戦いの中で自我を取り戻していく。御庭番衆の四乃森蒼紫(伊勢谷友介)は“闇堕ち”キャラクターだったが、剣心によって正義の心を取り戻す。『るろうに剣心 最終章 The Final』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』に登場する巴(有村架純)も、剣心との日々で少しずつ感情を表に出すように。また、作品全体を通して剣心を支える神谷薫(武井咲)の信条は「活心」であり「活人」。心を救い、人を活かす剣を志している。剣心の「不殺」と共鳴するものであり、『るろうに剣心 最終章 The Final』でも克明に描かれている。


 こうして見ていくと、メインのエピソードにはすべて「エモーション」が強く込められており、それぞれの信念が、「モーション」へとつながっていくことがわかる。




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