©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning 」製作委員会
『るろうに剣心 最終章 The Final』心情描写なくして、アクションは映えず――作品を貫く、“生身の熱”
2021.04.23
これまでにいなかった“悪”との対峙
ただ、ここまで述べてきたように、アクションというモーションが映えるのは、それ以前にエモーションがちゃんと立っているが故。大きなところでいうと、「剣心への復讐を宿願とする」縁と、「縁の姉の命を奪ってしまった悔恨を背負った」剣心では、やはり技のキレに差が出る。そのハンディキャップをどう克服し、剣心は縁を倒すのか。そもそも、倒しても許されるのか。何をもって、縁との因縁に決着をつければいいのか――。こうした私闘の難しさが、両者のバトルをより劇的なものに引き上げている。
縁が仲間に引き入れたのは、いずれも剣心に恨みを持つ者たちだ。「仲間を殺された」殺人者は外道であるため、まだ刀を振るうのにためらいは少ないだろうが、彼らは剣心を直に狙うのではなく、彼にゆかりを持つ者を攻撃し、精神的に追い詰めていく。天誅ならぬ「人誅」を掲げ、剣心と関わった人々を情け容赦なく手にかけようとする彼らの異常性は、いままでの敵が持ち合わせていなかったものだ。
『るろうに剣心 最終章 The Final』©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning 」製作委員会
シリーズ前3作で描かれたのは、目的を果たすために剣心を排除しようとする者や、剣心と戦うことが目的の者たち。そこに「剣心を苦しめたい。そのためなら、関係者を優先して攻撃する」という思いはなかった。そうした意味で、本作のモーション→エモーションの構図は、シリーズ屈指と言っていいほどにダークなのである。だが、「過去との対峙」という大テーマを描く上で、“過去からの亡霊”との対決は、必定であった。最凶の敵・縁との戦いの中で、剣心は何を見出すのか――。
仮に縁との戦いに勝ったとしても、それで解決するわけではない。剣心が己の人生に“答え”を出すとき、初めて永きにわたる私たちの旅も完結するのだ。なお、『るろうに剣心 最終章 The Final』では、原作とやや異なる「こう来たか!」という新たな解釈が提示されている。それは言うまでもなく、ここでしか観られないものだ。日本映画史に残るであろう壮大なプロジェクトの終着点、ぜひしかと劇場で受け止めていただきたい。
※『るろうに剣心 最終章 The Final』の劇中におけるアクション・ドラマの詳細な解説は、劇場パンフレットにSYOさんが寄稿されています。ご興味のある方は、そちらもあわせてご覧ください。
取材・文:SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema」
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『るろうに剣心 最終章 The Final』
2021年4月23日(金)全国ロードショー
配給: ワーナー・ブラザース映画
©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning 」製作委員会