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『スプリング・ブレイカーズ』ハーモニー・コリンが確信犯的に描く“現実逃避の終焉“

(c)Photofest / Getty Images

『スプリング・ブレイカーズ』ハーモニー・コリンが確信犯的に描く“現実逃避の終焉“

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ポップアイコンが象徴する“現実逃避の終焉”



 ブリトニー・スピアーズもまた、ディズニー・チャンネル出身の元子役タレントで、セレーナ・ゴメスやヴァネッサ・ハジェンズの大先輩にあたる。11歳の時に人気番組「ミッキーマウス・クラブ」のオーディションに合格してお茶の間の人気者になり、16歳で歌手デビュー。ファーストアルバムが全世界で3,000万枚を売り上げる大ヒットを記録し、一気に大スターの座を駆け上がった。ちなみに同じ「ミッキーマウス・クラブ」の出身者には、一時はブリトニーと交際していたジャスティン・ティンバーレイク、ライアン・ゴズリングやクリスティーナ・アギレラがいる。


 しかしブリトニーは、世間から注目され、パパラッチに追われ続けるセレブ生活の中で次第に壊れていった。パーティー三昧の毎日を送り、幼なじみと衝動的に結婚式を上げてすぐに撤回したり、美容院に入って自らバリカンを使って坊主頭にしたこともあった。最近では莫大な財産を父親に管理されていることに不服を申し立て、今年の始めにはアメリカで彼女のメンタルヘルスと管財権の裁判を扱ったドキュメンタリー『Framing Britney Spears』が放送されて大きな反響を呼んでいる。


『Framing Britney Spears』予告


 いずれにせよ、ブリトニーは一挙手一投足が注目され、衆目に晒され、プライベートを消費されてきた。本作が公開された2013年時点でも、ただのポップアイコンでなく、一度は堕ちるところまで堕ちた偶像だった。彼女たちのブリトニーへの憧憬は、決して理想のアイドルに向けられたものではないのだ。


 そもそも「Everytime」の歌詞は、ブリトニーとの破局を赤裸々に歌ったジャスティン・ティンバーレイクの「CRY ME A RIVER」のアンサーソングという位置づけで、別れた恋人に謝罪を告げる、痛みに満ちた内容だ。


「CRY ME A RIVER」MV


 そしてもうひとつ重要なのが「Everytime」のミュージックビデオ。ブリトニーはスティーヴン・ドーフと一緒にブリトニー本人を思わせるセレブカップルを演じており、パパラッチに追われる姿や、カップルの荒れた生活と醜い諍いが映し出される。そしてブリトニーは、ホテルのバスタブで自分が死んでいく幻想を見るのだ。


「EVERYTIME」MV


 舞台になっているのが、ハリウッドセレブ御用達で知られ、かつてブリトニーが幼なじみとひらめき婚を決めたラスベガスのザ・パームス・カジノ・リゾートというのも意味深だ。「Everytime」はポップアイコンの虚像を引き剥がし、グロテスクで哀しい現実に目を向けさせる、セレブという存在の光と影が織り込み済みの楽曲なのである。




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