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『スプリング・ブレイカーズ』ハーモニー・コリンが確信犯的に描く“現実逃避の終焉“

(c)Photofest / Getty Images

『スプリング・ブレイカーズ』ハーモニー・コリンが確信犯的に描く“現実逃避の終焉“

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『スプリング・ブレイカーズ』あらすじ

春休みにフロリダのビーチに繰り出したい4人の女子大生たち。日常はあまりにも退屈で窒息しそうなのに、全員の貯金を集めても旅費には到底足りない。業を煮やした彼女たちは水鉄砲を振り回して町のダイナーからカネを奪い、長距離バスで田舎町を飛び出していく。フロリダのリゾートタウンで過ごすパーティー三昧の日々は、地元のアゲアゲなギャング、エイリアンと出会ったことでさらにエスカレート。水鉄砲は本物の鉄砲に持ち替えられ、危険な裏の世界に飛び込んでいく。



 『スプリング・ブレイカーズ』は、1990年代半ばのアメリカ映画界に突如として現れた鬼っ子、ハーモニー・コリンが2012年に発表した(全米と日本での公開は2013年)5本目の長編監督作だ。


 それまでのコリンはメジャーに背を向け、先鋭的なアーティストとして映画表現を追求していた。しかし『スプリング・ブレイカーズ』では、ディズニー・チャンネルの人気者だったセレーナ・ゴメスやヴァネッサ・ハジェンズ、サム・ライミ版「スパイダーマン」三部作のジェームズ・フランコらメジャーな人気俳優を起用。挑発的な作風を失うことなく、新たな境地を開拓してみせた。


Index


女子大生4人組が刹那の春休みを味わい尽くす!



 陽光のビーチ。クラブミュージックで踊りまくり、ビールを浴びるように飲んではしゃぐ水着姿の若者たち。トップレスで跳ね回る胸がスローモーション映像で捉えられ、彼女たちがくわえるキャンディバーはあからさまに性的な隠喩となる。この扇情的で露悪的なオープニングで、『スプリング・ブレイカーズ』は一定数の観客を振り落としにかかる。まるで「ついて来られる?」と挑発するかのように。


 アメリカのスプリング・ブレイク(春休み)には、大学生たちがハメを外してバカ騒ぎするという奇妙な伝統があるそうだが、本作が提示する、全力でハメを外すパリピどもの姿に「なんとくだらない連中か」と嫌悪感をもよおす人がいても不思議はない。


『スプリング・ブレイカーズ』予告


 主人公は、春休みにフロリダのビーチに繰り出したい4人の女子大生たち。日常はあまりにも退屈で窒息しそうなのに、全員の貯金を集めても旅費には到底足りない。業を煮やした彼女たちは水鉄砲を振り回して町のダイナーからカネを奪い、長距離バスで田舎町を飛び出していく。いや、ダメだろ。若気のいたりだとしても絶対にアウトだろ。しかし、この映画は、そんな彼女たちの百鬼夜行にジャッジを下そうとはしない。


 フロリダのリゾートタウンで過ごすパーティー三昧の日々は、地元のアゲアゲなギャング、エイリアン(フランコ)と出会ったことでさらにエスカレートする。水鉄砲は本物の鉄砲に持ち替えられ、危険な裏の世界に飛び込んでいく。束の間の現実逃避だったはずなのに、なぜこれほどまでにムチャを続けるのか。その理由は本人たちにもわからない。ただ退屈だからというには常軌を逸している。ただただ遮二無二なって、刹那の一瞬を味わい尽くそうとする彼女たちの姿が、ポップでカラフルで幻想的な映像で綴られていくのである。




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