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『ビーチ・バム まじめに不真面目』父親から受け継いだハーモニー・コリン・メソッド
2021.04.28
Index
レオス・カラックスとの共鳴:レクイエム
レオス・カラックスのドキュメンタリー『Mr.Leos Carax A Vision of Leos Carax』(14)において、ハーモニー・コリンはレオス・カラックスの映画を「死のロマンス」と形容する。他人についての美しい賛辞が、しばしば無意識に自分自身のヴィジョン、美学を語っていることがあるように、この言葉はハーモニー・コリンの映画が放つポエジーを的確に表している。
かつて、レオス・カラックスの『ポンヌフの恋人』(91)について、「魂の解放」と評したハーモニー・コリンは、『ミスター・ロンリー』(07)に出演したレオス・カラックスに、次の台詞を用意する。「別の自分になれると思うか?不可能だ」。マイケル・ジャクソンの物真似芸人を辞めると申し出た主人公(ディエゴ・ルナ)に対する辛辣な返答だ。そしてこの台詞は、そのままレオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』(12)で、父親(ドニ・ラヴァン)が娘に言い放つ台詞にフィードバックされる。「おまえがおまえとして生きる罰をおまえは受け入れなければならない」。
『ビーチ・バム まじめに不真面目』予告
天才的な長編デビュー作『ガンモ』(97)で、レオス・カラックスのアレックス3部作のカメラマン、ジャン=イヴ・エスコフィエを起用した、ハーモニー・コリンのレオス・カラックスへの憧憬は疑いようもない。そして、アメリカとフランスをまたぐこの二人の異端の映画作家の間には、互いに共鳴し合う関係が結ばれている。ハーモニー・コリンがレオス・カラックスの映画を「死のロマンス」と称したように、新作『ビーチ・バム』には、放蕩詩人ムーンドッグ(マシュー・マコノヒー)を介した「夢の死」へのレクイエムが描かれている。ハーモニー・コリンの全ての作品がそうであったように、『ビーチ・バム』は、忘れられた人々、忘れられた土地へのレクイエムを奏でる。