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『クリープショー』スティーヴン・キングの人間描写と、ジョージ・A・ロメロの卓越した演出、そして、あの虫の大群

© 2018 Paramount Pictures.

『クリープショー』スティーヴン・キングの人間描写と、ジョージ・A・ロメロの卓越した演出、そして、あの虫の大群

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スティーヴン・キング流のホラー作劇



 『クリープショー』で脚本を担当したスティーヴン・キングと言えば、『ショーシャンクの空に』(94)や『スタンド・バイ・ミー』(86)といった感動作品の原作者として有名だが、彼を人気作家たらしめたのは、現代を舞台にしたホラー小説「モダン・ホラー」作家としてである。


 デビュー作「キャリー」は超能力を開花させたいじめられっ子の復讐劇。続く「呪われた町」は吸血鬼に襲われるアメリカの田舎町。そして「シャイニング」では幽霊の住むホテルに閉じ込められた家族の恐怖。と、どれもあらすじだけを抜き出すとB級ホラー映画そのものである。


 映画化されていない作品の方が珍しいほど、キング小説の映画化作品は多い。監督に恵まれると稀代の傑作になるが、暗澹たる結果を残す映画化作も少なくない。その理由こそ、このB級ホラーじみたあらすじであろう。

 

『クリープショー』© 2018 Paramount Pictures.


 キング小説の魅力とは、シンプルな物語を彩る登場人物の心理や複雑な状況を緻密かつ大胆な筆致で書き込んでいくところだ。キングの心理描写の流麗さと、その映画化が困難である特徴が最も顕著に現れているのは小説『クージョ』と映画化作『クジョー』(83)だろう。


 狂犬病に罹ったセントバーナード犬に襲われた真夏の炎天下、故障して動かない車の中に籠城せざるをえなくなった親子。という超シンプルなあらすじの中で、キングは複雑な背景や心象を書き込んでいく。


 圧巻はクージョが主人を襲ってしまいそうになる気持ちをどうにか抑えている、という心情(むろん犬の心情だ)を数ページにわたって表した箇所だ。しかし、映画版では人間の登場人物の描写は辛うじて小説に準拠して表現されているが、物言わぬ犬の心象までは表すことが出来ず、原作の持つ魅力の半分ほども表せていない作品になってしまっている。


 『クリープショー』はオムニバスの短い話ということもあり、物語自体は相変わらずシンプルなもので、各話の山場はモンスターやゾンビの活躍である。しかし、キング本人直々の脚本で、いつものようにザラついてヒリヒリとする人間関係や心象の背景を投入し、キング流ホラーへと昇華させている。





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