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『アメリカン・ユートピア』デイヴィッド・バーンとスパイク・リーが示唆する“ユートピア”とは?

©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED

『アメリカン・ユートピア』デイヴィッド・バーンとスパイク・リーが示唆する“ユートピア”とは?

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選曲ではシニカルな歌詞をはずした



 ニューヨーク在住のバーンに昨年の12月、短い時間だったが、電話取材の機会を得た。詳細は音楽誌「ミュージック・マガジン」(21年5月号)に書いたが、そこから少しだけ彼の言葉を引用しておきたい。


 映画には21曲登場する。実はアルバム「アメリカン・ユートピア」には10曲収録されているが、映画にはそのうち5曲しか登場しない。そのかわり、トーキング・ヘッズ時代の代表的な9曲収録。そのせいか、映画版の方は、親しみやすくて、分かりやすい印象だ。


 個人的には18年のアルバムに収録された曲「Doing the Right Thing」が気にいっていたが、映画にはなかったので、その点を聞くと、こんな答えが返ってきた。「実はショーを作るにあたって、歌詞についていろいろ考え直した。その曲は歌詞がシニカルすぎてショーの雰囲気に合わないのではずした。トーキング・ヘッズ時代の曲に関しても歌詞を考え直した。「Psycho Killer」などを聞きたい人もいたかもしれないが、これも歌詞が合わないと思った」つまり、舞台を作るにあたっては、歌の歌詞に重点を置いて選曲をしていったというわけだ。



『アメリカン・ユートピア』©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED


 バーンが書く歌詞は文明風刺的なシニカルな内容なものも多いが、今回の舞台版では風刺の量はやや抑え、11人の仲間たちとプレイしやすい曲を選んだのだろう。また、ロックファン向けのツアーとブロードウェイのショーとの違いについてはこうコメントしていた。「ツアーではみんなが踊り、音楽を演奏し、少しだけ話をする、というスタイルだったが、舞台版にはもっと物語が必要だと感じた。(中略)そこで全体のはじまり、まんなか、終わり、という流れを考えた」


 全体の物語性を強調し、バーンの語りも多めに取り入れることで、ヘッズやバーンをよく知らない人にもとっつきやすい構成になっている。映画では最初にプラスティックの脳を持ったバーンが現れ、人間の脳のしくみについて話を始める。赤ん坊の神経細胞のつながりは大人のそれよりも多く、成長することで減るというデータがある。大人の方が実は赤ん坊より愚かということになる。




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