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『2046』なぜタク/木村拓哉は列車に乗るのか? ウォン・カーウァイが描く資本主義と時代の不安

© 2004 BLOCK 2 PICTURES INC. © 2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED

『2046』なぜタク/木村拓哉は列車に乗るのか? ウォン・カーウァイが描く資本主義と時代の不安

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過去に囚われた主人公



 はじめに、「2046」という数字に込められている意味を押さえておく必要があるだろう。1997年、イギリスから中国に返還された香港は、一国二制度、つまり最低50年間は政治体制を変更しないという「五十年不変」を約束された。2046年とはその期間の最終年であり、香港という都市が再び次の段階に進むことを余儀なくされるタイミングだ。『2046』の大きなテーマのひとつが1997年以降の香港であることは、タイトルの時点で十分に予測できる。


 カーウァイは『花様年華』で、チャウとチャン夫人の曖昧な関係性、二人の〈宙吊り〉になった時間とその終焉によって、1966年前後と1997年の香港返還以降、二つの時代の香港の状況を暗に提示した。その続編的作品である『2046』の背景には、それ以降、すなわち1966年以降と1997年以降の香港がある。過去の恋愛を忘れられないチャウの物語が前者を、そして〈2046〉をめぐる物語が後者を象徴しているのだ。



『2046』© 2004 BLOCK 2 PICTURES INC. © 2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED


 『花様年華』で時間的・空間的に〈宙吊り〉状態にあったチャウとチャン夫人は、ホテルの一室やタクシー、道路といった一時的な居場所にいることが多かった。『2046』でも、チャウは同様にして〈宙吊り〉の時間をさまよう。彼はホテルの一室に暮らし、ある意味で外部とは接点を持たず、一人の女性をきちんと愛せずにいる。そして、チャウが執筆する小説の中では、〈2046〉を目指す人々が失った記憶を求めていた。


 ここにあるのは、チャン夫人という“過去”にいまだ執着しているチャウの姿にほかならない。彼自身がモノローグで告白しているように、小説に書かれていることは自らの日常の反映なのである。



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