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『2046』なぜタク/木村拓哉は列車に乗るのか? ウォン・カーウァイが描く資本主義と時代の不安

© 2004 BLOCK 2 PICTURES INC. © 2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED

『2046』なぜタク/木村拓哉は列車に乗るのか? ウォン・カーウァイが描く資本主義と時代の不安

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『花様年華』『2046』から「繁花」へ



 カーウァイは『2046』について、タイトルとなった数字の意味を認めつつ、「政治的な問題を扱った作品を撮るつもりはまったくなかった。僕は人間のほうに興味があるから」と語った。その言葉通り、本作の表面的な政治的メッセージ性は非常に薄く、あくまでもチャウのパーソナルな物語を描くことに力が注がれている。政治的側面をあまり強調しなかった『花様年華』のほうが、むしろメッセージ性は強かったとさえ言えるだろう。


 しかし本作の場合、1997年以降の香港を背景のひとつとして“変化”を描いている以上、政治的な映画であることから逃れられない。2019年の大規模デモ、2020年の中国政府による香港国家安全維持法の施行を経た今、「変わらないものはあると思う?」という劇中の問いかけは切実さを増した。現在の香港はもはや、「五十年不変」の原則を破られているという声も大きい。



『2046』© 2004 BLOCK 2 PICTURES INC. © 2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED


 『2046』によって『欲望の翼』『花様年華』からの“60年代3部作”を締めくくったカーウァイは、「今後しばらくは60年代から離れるつもり」と語っていた。実際、その後のカーウァイが手がけた長編映画は、自身初の英語作品『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(07)と、1930年代を舞台にした『グランド・マスター』(13)のみ。『楽園の瑕』(94)の再編集版である『楽園の瑕 終極版』(08)もあったが、いずれにせよ60年代はおろか、前述の通り、その後の香港さえも撮っていないのである。


 しかし2022年、『花様年華』『2046』の物語がついに再び動き出すことになる。カーウァイにとって初めてのテレビシリーズとなる新作「繁花(原題)」では、自身の生まれ故郷である上海、1990年代の経済成長期を舞台に、ある富豪の物語が描かれる予定だ。この作品は『花様年華』『2046』から続く「物語の第3弾」になると語られているが、どのようにストーリーが繋がるのか、そして舞台が上海から香港に移ることはあるのか。カーウァイが長年の沈黙を経て、ついに返還後の香港を描く可能性もある。奇しくも2022年とは、香港返還後の「五十年不変」がちょうど折り返しを迎える年だ。



[参考文献・資料]

『2046』DVDスペシャル・エディション(特典映像)、TCエンタテインメント

『2046』劇場プログラム、(株)東和プロモーション、2004年

2046 映画2046 フォトブック完全版マガジンハウス、2004年

藤城孝輔「二つの時代のあいだで ―『花様年華』と『2046』における狭間の時空間―」、杉野健太郎(編著)『映画とイデオロギー』ミネルヴァ書房、2015年

フィルムメーカーズ[14]ウォン・カーウァイ」キネマ旬報社、2001年

ジミー・ンガイ、小川昌代(訳)「ウォン・カーウァイ」キネマ旬報社、1996年

https://variety.com/2021/film/news/wong-kar-wai-blossoms-tv-show-trailer-1234991810/

https://www.indiewire.com/2021/06/blossoms-shanghai-footage-wong-kar-wai-tv-series-1234642989/



文:稲垣貴俊

ライター/編集/ドラマトゥルク。映画・ドラマ・コミック・演劇・美術など領域を横断して執筆活動を展開。映画『TENET テネット』『ジョーカー』など劇場用プログラム寄稿、ウェブメディア編集、展覧会図録編集、ラジオ出演ほか。主な舞台作品に、PARCOプロデュース『藪原検校』トライストーン・エンタテイメント『少女仮面』ドラマトゥルク、木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談―通し上演―』『三人吉三』『勧進帳』補綴助手、KUNIO『グリークス』文芸。



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