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『インヒアレント・ヴァイス』陰謀と腐敗に彩られた、’70年代のカリフォルニア・ドリーム

© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc., Interactivecorp Films, LLC and RatPac-Dune Entertainment LLC.

『インヒアレント・ヴァイス』陰謀と腐敗に彩られた、’70年代のカリフォルニア・ドリーム

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ニール・ヤング、アレックス・コックス、ジム・エイブラハムズ



 映像的には、『過去への旅路/ジャーニー・スルー・ザ・パスト』(74)を参考にした。この映画は、シンガーソングライターのニール・ヤングがバーナード・シェイキー名義で発表した監督デビュー作。ポール・トーマス・アンダーソン曰く「理想とする土曜日の午後の天国のような映像」に溢れていて、太陽を逆光で捉えたショットは、『インヒアレント・ヴァイス』でも踏襲されている。ホアキン・フェニックス演じるドックのファッションは、この映画のニール・ヤングにインスパイアされたものだろう。


 セリフ運びの参考にしたのは、アレックス・コックス監督のデビュー作『レポマン』(84)。とめどなく続くダラダラした会話劇は、クエンティン・タランティーノにも通じるオフビート感覚。そして意外なことに、ポール・トーマス・アンダーソンはTVドラマ『フライング・コップ 知能指数0分署』(82)も影響を受けた作品に挙げている。『裸の銃を持つ男 』(88)の元となったナンセンス・コメディだ。脚本を手掛けたのは、『フライングハイ』(80)や『ホット・ショット』(91)などで知られるジム・エイブラハムズ。不条理かつボケっぱなしの世界観に、アンダーソンは衝撃を受けた。



『インヒアレント・ヴァイス』© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc., Interactivecorp Films, LLC and RatPac-Dune Entertainment LLC.


 「自分はなにをやってもいいんだと思えたんだよね。というのも、オープニングのシーンだけ取っても、タイトルも間違えるし、死んだ人がゲストで出るし。本当に狂ってるし、新鮮だったし、自分はやりたいことをなんでもやってもいいと思えた。開放感を得た瞬間だったんだ」(ユリイカ 2015年5月号 特集ポール・トーマス・アンダーソンより引用)


 「自分はやりたいことをなんでもやってもいい」という精神が、作品作りを大いに後押ししたのだ。




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