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『パリの灯は遠く』ジョゼフ・ロージー監督が投影した、歴史と記憶のかすかな連鎖

(c)Photofest / Getty Images

『パリの灯は遠く』ジョゼフ・ロージー監督が投影した、歴史と記憶のかすかな連鎖

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ヴェル・ディヴ事件の再現



 映画の最後に待ち受けるのは、フランス警察によるユダヤ人一斉検挙。パリの競輪場(ヴェル・ディヴ)に集められた大勢のユダヤ人は、子供も大人も問わず全員が列車に詰め込まれ、ナチスの収容所へと運ばれていく。これは1942年にパリで実際に起きた、通称ヴェル・ディヴ事件の再現。この事件は今ではヨーロッパにおけるユダヤ人虐殺の重要な証拠として知られ、『黄色い星の子供たち』(ローズ・ボッシュ、10)、『サラの鍵』(ジル・パケ=ブランネール、10)といった映画の題材にもなっている。


 一斉検挙シーンの撮影には、ユダヤ人教会から派遣された二千人以上のエキストラが参加した。エキストラのなかには、実際にこの時代を体験した人々が大勢いて、撮影中、当時を思い出しパニックになる人もいたという。当時を知る者は、スタッフにもたくさんいた。映画美術を手がけた、アレクサンドル・トローネルもその一人。ハンガリー系ユダヤ人のトローネルが、マルセル・カルネ監督『天井桟敷の人々』(45)の撮影中、ナチスから身を隠すため山奥の修道院に潜伏し、そこからスタッフに指示を出しセットを完成させたのは有名な話だ。


『天井桟敷の人々』予告


 ちなみにロージー映画の美術監督として有名なのは『召使』(63)や『夕なぎ』(68)など多くの作品でタッグを組んだリチャード・マクドナルドだが、『パリの灯は遠く』ではベテランのトローネが初めてロージー組に参加。アラン・ドロンが住む美術品に溢れた自宅や、ジャンヌ・モローらが集まる邸宅、そしてラストの大舞台となる競輪場を見事につくりあげた。





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