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『パリの灯は遠く』ジョゼフ・ロージー監督が投影した、歴史と記憶のかすかな連鎖

(c)Photofest / Getty Images

『パリの灯は遠く』ジョゼフ・ロージー監督が投影した、歴史と記憶のかすかな連鎖

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『パリの灯は遠く』あらすじ

1942年、パリ。ナチスによるユダヤ人排斥が迫るなか、美術商のロベール・クラインは優雅な暮らしを楽しんでいた。彼は、ユダヤ系の人々が国外逃亡のため泣く泣く手放す美術品を安く買い叩き、自分の生活を維持している。だがある日、彼は自分とまったく同じ名前のユダヤ系の男が同じパリに暮らしていることを知る。彼と取り違えられことで、ユダヤ人として警察のリストに登録されてしまったクラインは、自らにかけられた疑惑(ユダヤ人であるという虚偽の情報)を晴らすため、もう一人の「クライン氏」を探し始める。どうやら「クライン氏」はレジスタンスの一味らしいが、その正体はなかなか掴めない。男の行方を追ううち、彼はいつしか自分のドッペルゲンガー的存在に取り憑かれていく・・・。


Index


二人の「クライン氏」の物語



 映画には、ときに作り手の意図を超えた何かが映り込む。風や音が突如として画面に入り込む。俳優や監督の実人生が物語と呼応する。撮影された時代の空気が物語の時代のそれと合致する。そんな予期せぬ乱入が、映画をより大きく膨らませる。


 ドイツ占領下のパリを舞台にした『パリの灯は遠く』(76)がまさにそう。現実のさまざまな要素が混入し、化学反応を起こす。監督は『エヴァの匂い』(62)などの監督作を持つジョセフ・ロージー。原題の「Mr.Klein」が示す通り、これは「クライン氏」の物語だ。ただしその名前が示すのは一人ではない。主演のアラン・ドロンが演じる美術商の男ロベール・クライン、そしてもう一人の「クライン氏」が第二の主人公となる。


『パリの灯は遠く』予告


 1942年、パリ。ナチスによるユダヤ人排斥が迫るなか、美術商のロベール・クラインは優雅な暮らしを楽しんでいた。彼は、ユダヤ系の人々が国外逃亡のため泣く泣く手放す美術品を安く買い叩き、自分の生活を維持している。だがある日、彼は自分とまったく同じ名前のユダヤ系の男が同じパリに暮らしていることを知る。彼と取り違えられことで、ユダヤ人として警察のリストに登録されてしまったクラインは、自らにかけられた疑惑(ユダヤ人であるという虚偽の情報)を晴らすため、もう一人の「クライン氏」を探し始める。どうやら「クライン氏」はレジスタンスの一味らしいが、その正体はなかなか掴めない。男の行方を追ううち、彼はいつしか自分のドッペルゲンガー的存在に取り憑かれていく。


 パリに住む多くのフランス人は、ユダヤ系の人々の身に起きている悲劇を目にしながら、何も手を打たず、気づかないふりでやり過ごしている。ロベール・クラインも、そんな無関心さと非情さを持った傍観者の一人だ。一方で、彼は自分がいつのまにか当事者になりつつあることに気づいていない。ユダヤ人名簿に自分の名前が載ろうと、自分は絶対に当事者ではないと確信している。だが一度疑惑をかけられた以上、それを証明することは不可能だ。最後の最後、もはや取り返しのつかない事態になったとき、彼はようやくその事実に気づくのだ。





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